映画『八日目の蝉』のあらすじ・ネタバレ・感想

邦画

直木賞作家・角田光代のベストセラー小説「八日目の蝉」が原作となっている映画作品、『八日目の蝉』。

今回は、映画『八日目の蝉』の作品概要・あらすじ・ネタバレ・感想をご紹介します。

『八日目の蝉』の作品概要

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上映日2011年4月29日
上映時間147分
制作国日本
監督成島出
原作角田光代
脚本奥寺佐渡子
音楽安川午朗
主題歌中島美嘉「Dear」
出演井上真央/小池栄子/森口瑤子/田中哲司/渡邉このみ/吉本菜穂子/稲葉菜月/市川実和子/余貴美子/平田満/風吹ジュン/劇団ひとり

「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」というキャッチコピーが印象的な作品。女性の生きる哀しみと強さを描き、角田光代原作の映画・ドラマ作品となっている。

2012年第35回日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞・主演女優賞ほか10部門を受賞した。動員数は19万6,130人になり映画観客動員ランキングで初登場第5位となった。

愛情劇の中にサスペンス的な要素を含んだ描写は、見た人々を虜にする。

『八日目の蝉』のあらすじ

希和子は、不倫相手の妻が産んだ赤ん坊を衝動的に誘拐した。希和子は誘拐犯でありながらその子供を実の子のように愛情をかけ育てあげた。しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。

21年の月日が過ぎ、初めて明かされる悲しい愛の物語。

登場人物紹介

秋山恵理菜・薫(井上真央)


幼い頃の誘拐事件のせいで周囲になじめなくなっていた。あることがきっかけとなり自分という存在を認めていく。

野々宮希和子(永作博美)


優しく穏やかな女性。あることをきっかけに薫を守ろうと決意し、1人で生きていく強い女性。

安藤千草(小池栄子)

フリーライターとして恵理菜の事件を取材している。幼い頃に恵理菜との交流があった。

秋山恵津子(森口瑤子)

ヒステリックな一面を持ち、夫の不倫相手だった希和子に恨みを抱く。不器用で愛を十分に恵理菜に与えられない。

秋山丈博(田中哲司)

希和子の不倫相手。婚約していて奥さんがいる。

岸田孝史(劇団ひとり)

恵理菜の不倫相手。恵理菜が事務のアルバイトで勤務した塾の講師

[出典:http://www.ntv.co.jp/kinro/lineup/20120622/]

『八日目の蝉』のネタバレ

この先、『八日目の蝉』のストーリーを結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください

希和子を変えた出来事

誘拐事件の犯人である野々宮希和子は、1995年10月に裁判所で「逮捕されるまで毎日祈るような気持ちで生活をしました。今日一日、明日一日、どうか薫と生きられますように、それだけを祈り続け暮らしました」と語った。

 

希和子は1985年に大手の下着メーカーで働いていた。同僚の秋山丈博とも順調に交際を重ねて幸せな日々を過ごしていた。しかし、希和子は丈博との恋愛が不倫であるという事実を知ってしまうのだった。そんな中、希和子は丈博との子供を妊娠していた。

丈博は希和子から妊娠を告げられ、妻である恵津子との離婚計画が台無しになると考え、希和子に子供を中絶するように頼み込んだ。その中絶が原因となり希和子は一生子供を産めない体になってしまうのだった。

一方、恵津子は丈博との子供を宿していて、希和子の家に訪れ希和子が丈博との間にできた子供を中絶したことをひどく罵倒したのだった。

事件が起きた日


後日、丈博と恵津子の間に赤ん坊が生まれた。

数か月後、希和子は秋山夫妻の留守中に家にこっそりと忍び込み丈博と恵津子の間にできた赤ん坊を殺してやろうと考えていた。するとそこにいた赤ん坊は、優しく希和子に微笑みかけていた。

希和子はその瞬間「この子のためだけに生きよう」と決意し、赤ん坊をどしゃぶりの雨の中連れ去った。そして、この日から希和子は誘拐犯となったのだった。

希和子は赤ん坊に「薫」という名をつけて逃げ回った。たどり着いたのは複雑な事情を抱えた女性たちだけで生活するエンジェルホームだった。そこには家族や夫らに理不尽な仕打ちを受けたり、見放されたなどのさまざまな理由を持った人々が集まっていた。

現在の恵理菜(回想シーン)


4歳まで希和子に育てられた恵理菜(薫)は大学生になっていた。事件後、恵理菜は両親との折り合いが悪く1人暮らしをしていたのだ。

恵理菜は仕事熱心な働き者だったが、希和子と同じく既婚者である岸田孝史と付き合っていた。そんな恵理菜のもとに1人のフリーライターである安藤が訪ねてきた。

安藤はバイト終わりの恵理菜を待ち伏せし、自分で調べた資料を恵理菜に渡した。安藤は恵理菜の過去を聞き出そうと必死だったのだ。強引な安藤を恵理菜は初めは避けていたが「あんたは何も悪く無い」と話す安藤とすぐに打ち解け、恵理菜は自分の過去と向き合い始めたのだった。

 

そして安藤を訪ねた恵理菜は「妊娠」したことを相談し、はっきりとしない態度の岸田に別れを切り出すのだった。

しかしその後、岸田との子供を産むことを決意した恵理菜は、安藤から衝撃的な事実を聞かされた。「あんた、リカちゃんて呼ばれてたんだよ。希和子はルツさんであたしはマロン。あんたとあたしは兄弟のように育ったの。覚えてないよね?」そう語る安藤は真剣な表情だった。

その後、恵理菜は過去を告白した安藤と共に取材旅行と題してエンジェルホームへ出かけることになった。

逃亡生活

希和子は逃げついたエンジェルホームに入所した。施設長のエンゼルから、希和子は「ルツ」薫は「リベカ」という新しい名前をつけられ施設の中で自給自足の生活をスタートさせた。

しかし、希和子はエンジェルホームで生活していく中で、そこは宗教団体のような場所であることに気が付いていった。希和子は次第に警察が来るのではないかと恐れるようになり、エンジェルホームから逃亡することを決意したのだ。

希和子は施設で知り合った沢田久美から岡山の小豆島にある彼女の母の家を紹介された。希和子はそこへ薫と逃亡することを決めた。

 

希和子は沢田久美の母である昌江の家で偽名である「宮田京子」を名乗った。そして、そうめん工場で働きながら、薫をわが子のように優しく愛情を注いで育てていった。決して裕福ではなかったが希和子と薫が過ごす日々はとてもかけがえのないものだった。

希和子は美しい瀬戸の景色をながめながら薫に「これからはきれいなものを見せてあげる」と約束をした。月日は過ぎていき薫はすくすくと育っていった。

きっかけとなる日


ある日、希和子と薫は小豆島の「虫送りの祭り」に参加し、祭りを楽しんでいた。その日の「虫送りの祭り」の様子を撮影しにアマチュアカメラマンが来ていた。そして、そこで取られた写真がコンクールに入賞してしまったのだ。

その写真には希和子と薫の姿がはっきりと写っていた。写真は全国紙に掲載され報道されたのだ。それを見た希和子はこの日々が長くは続かないことを悟り、薫との最後の親子の思い出を作るため、ある写真館で二人で写真を撮ってもらうのだった。

そして、最後の思い出を作るために学校や海に行った。最後にお寺で、薫は蝉の抜け殻を拾った。希和子は薫に「蝉は7日間だけ生きられるの。でも8日目も生きることがあるかもね」と寂しそうに告げるのだった。

2人の別れ


ある日、希和子と薫がいつものように買い物をして帰ろうとすると外に警察がいることに気づいた。希和子はもう逃げられないということを感じていたのだ。希和子は薫に「船乗り場で先に並んでて」と嘘をつき警察のもとへと歩かせた。

そして警察は薫を確保し、希和子も警察に押さえつけられた。希和子は最後に「ちょっと待ってください。その子はまだご飯を食べていません。よろしくお願いします」と警察に頭を下げたのだった。

最後まで薫の母親を貫き通していた。

蘇る幼き日の記憶


事件から月日が流れ、21歳となった恵理菜は安藤に誘われ誘拐されていた時の場所への取材旅行にでかけた。恵理菜と安藤が幼い頃に過ごしたエンジェルホームは、既に解散し建物は廃墟となっていた。

恵理菜は、自分の過去を探しに岡山の小豆島に渡ることを決めた。海や学校、お寺の風景、夏祭りの伝統行事をした丘で恵理菜の思い出が徐々に蘇ってきたのだった。そして、ある写真館の前で1枚の写真を発見した。それは希和子と恵理の写真だった。

恵理菜は、その写真を手掛かりに港の漁師に「この女性を知りませんか?」と希和子のことを訪ねた。その漁師はかつて希和子に思いを寄せていた文治だった。しかし、希和子の居場所は分からなかった。

 

恵理菜は、フェリー乗り場のベンチで休みながら、希和子と幼い自分が来たあの夜のフェリー乗り場での記憶を巡らせた。そして、すべての思い出を取り戻した恵理菜は写真館へ走った。

恵理菜は写真を見て、希和子が撮影の前に「薫、ありがとう。ママ、薫と居られて幸せだった。ママはもういらない、何にもいらない。薫が全部持っていって、大好きよ、薫」と言った思い出がよみがえるのだった。

恵理菜は希和子から愛されていたことを思い出し、前向きに8日目を生きていこうと決意した。そして、希和子は安藤に「私、もうこの子が好きだ」とお腹の子を指して笑った。そこには母親としての堅い決意があった。

『八日目の蝉』の感想

この作品は複雑な思いが交差しあい、最終的に答えがわかる深い映画でした。「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」というキャッチコピーはこの映画だからこそ意味を成すものだと感じました。

複雑な思いを抱えた希和子の細かな感情の変化を繊細に表現されていました。そして、希和子が誘拐犯でありながらも1人の母親として恵理菜に精一杯の愛情を注ぐ姿に感動が止まりませんでした。そして、その愛が時を越えて恵理菜に伝わるのがこの映画の見どころだと思います。

私が特に印象的だったシーンは、最後の別れのシーンです。希和子は薫と別れることになることを察しながらも薫を1人で警察のもとに歩かせます。私は希和子が「私はもう一緒にいれないけれど、薫はもう1人で歩んでいける」と伝えているように感じました。

切ない愛の物語は見ごたえがあり、涙すること間違いなしです。