映画『新聞記者』のあらすじ・ネタバレ・感想

邦画

政府に圧力かけられながらも、ひとりの新聞記者と内閣情報調査室の官僚がとある事件の真相を追う姿を描いた映画『新聞記者』

今回は、映画『新聞記者』の作品概要・あらすじ・ネタバレ・感想をご紹介します。

『新聞記者』の作品概要

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上映日2019年6月28日
上映時間113分
制作国日本
監督藤井道人
原案望月衣塑子「新聞記者」
脚本詩森ろば/高石明彦/藤井道人
音楽若代太郎
主題歌OAU「Where have you gone」
出演シム・ウンギョン/松坂桃李/本田翼/岡山天音/高橋努/西田尚美/高橋和也/北村有起哉/田中哲司

“権力の監視役”としてのマスメディアの力が急速に弱まっている現代の日本。現役新聞記者による同名ベストセラーを原案に、官邸とメディアの深い闇を赤裸々に描き出した社会派エンターテインメント。

2020年の第43回日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞。

『新聞記者』のあらすじ

日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育った東都新聞社会部の若手記者・吉岡エリカのもとに、「大学新設計画に関する極秘情報」が記された匿名FAXが届く。

吉岡が調査を進めると、内閣府の神崎という人物が浮上。しかしその矢先、当の神崎が自殺してしまう。

神崎の死に疑問を抱いた吉岡は、同じように上司であった神崎の死に疑問を持つ内閣情報調査室の若手エリート、杉原拓海と巡り会う。

登場人物紹介

吉岡エリカ(シム・ウンギョン)

東都新聞社会部の記者。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育つ。

杉原拓海(松坂桃李)

内閣情報調査室(内調)のエリート官僚。

杉原奈津美(本田翼)

拓海の妻。出産を控えている。

神崎俊尚(高橋和也)

杉原が尊敬する外務省時代の上司。

都筑亮一(高橋努)

杉原の元同僚。神崎にも世話になった。

倉持大輔(岡山天音)

東都新聞の記者。吉岡の同僚。

神崎伸子(西田尚美)

神崎俊尚の妻。杉原とも顔なじみである。

陣野和正(北村有起哉)

東都新聞社会部の編集長。吉岡の上司。

多田智也(田中哲司)

杉原の上司。内閣情報調査室を指揮する。

[出典:映画公式サイト]

『新聞記者』のネタバレ

この先、『新聞記者』のストーリーを結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください

匿名のFAX

東都新聞記者・吉岡エリカのもとに、「大学新設計画」に関する極秘情報が匿名FAXで届いた。内閣府が主導し、民間企業が運営するという点が通常とは異なり、違和感があった。

編集長の陣野は「政権がひっくり返るほどのスクープになるかもしれない」と言って、吉岡に調査を任せる。

吉岡は日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ったが、ある思いを秘めて日本の新聞社で働いていた。「誰よりも自分を信じ疑え」が吉岡の信念だった。

一方、内閣情報調査室(内調)の官僚・杉原拓海は葛藤していた。「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、内調で与えられらた任務は現政権に不都合なニュースのコントロールだった。

 

首相御用達の記者が起こしたレイプ事件で、被害者の女性が顔出しで会見を行う。加害者は逮捕寸前で不起訴となり、裏で大きな力が動いていた。吉岡は彼女の勇気に奮起して記事を書くが、紙面に小さく掲載されただけだった。

一方、内調は被害者女性が野党議員とつながりがあり、ハニートラップだったという筋書きをでっち上げる。杉原の上司・多田は関係者のチャート図を作るよう命じた。

上司の多田は「日本のためだ」というが、杉原は疑問に感じていた。杉原が作ったチャート図は内調によってSNSに投稿され、世間に拡散される。

しかし、どこからかそのチャートが週刊誌に流れ、スクープ記事が出る。多田は杉原を叱責するが、杉原は多田に指示されたとおりに動いただけだった。

神崎の自殺

愛する妻・奈津美の出産が迫ったある日、杉原は尊敬する昔の上司・神崎と久々に再会する。神崎は5年前、ある事件で責任を取らされ、外務省を辞職していた。

神崎は「俺のようにはなるなよ」と自嘲気味に杉原に言った。杉原は酔いつぶれた神崎を自宅まで送る。神崎の妻・伸子は杉原に何か言おうとしたが、感謝だけ伝えた。

数日後、杉原はかつての同僚・都筑と再会する。都筑は神崎の後任として「内閣府の大学の件で来た」という。「内調が神崎をマークしていた」と初めて知る事実に杉原はがく然とする。

 

一方、吉岡が大学新設計画について調査を進めるうちに、内閣府の神崎という人物が浮上する。しかし、神崎が「療養中」ということしか分からなかった。

杉原は嫌な予感がして、神崎に電話をかける。やっと電話がつながったとき、神崎はビルの屋上にいた。神崎は「俺たちは一体何を守ってきたんだろうな」と問いかける。「すまない」と言い残して、神崎は屋上から身を投げた。

吉岡と杉原の出会い

杉原は「神崎に何をしたのか」と多田に問い詰める。しかし、多田に「子どもが生まれるそうじゃないか」と言われる。杉原は家族のことを考えると上に逆らうことができなかった。

杉原は神崎の葬儀に参列する。同じ頃、吉岡も葬儀を訪れていた。葬儀が終わって、神崎の遺族の周りに取材に来た記者が群がる。

吉岡は神崎の高校生になる娘を見て、過去の自分を重ねる。新聞記者だった吉岡の父親も自殺していたのだ。吉岡の父親は政府に関するあるスクープを誤報とされ、記者生命を絶たれていた。

 

吉岡はぶしつけな質問ばかりする記者の取り巻きを制する。その間に、杉原が神崎の母娘を車に載せ、ふたりは自宅に戻ることができた。

杉原は吉岡に「君もあちら側の人間だろ?」と声をかけた。吉岡は「神崎さんが亡くなった本当の理由が知りたい」と答える。杉原は「君には関係のないことだ」と応えた。

自殺の真相を追うふたり

葬儀が一段落したとき、病院から連絡が入り、杉原は病院に駆けつける。奈津美が家で破水し、危険な状態で病院に運ばれたのだった。幸い、帝王切開を行って母子ともに命に別状はなかった。

杉原は妻から何度も連絡があったことに気が付かなかった。杉原は安堵すると同時に、後悔の念にとらわれた。

吉岡は杉原が内閣の官僚だと知って、FAXで匿名の資料が送られてきたことを説明し「神崎は大学新設を止めたかったのではないか」と問いかける。吉岡は自分の名刺を杉原に渡した。

 

「大学新設案が頓挫した」という記事が出て、この問題は終わったかに思われたが、他紙はまだ追っていた。同僚の倉持は「別の国家戦略特区で再び計画を進めるのではないか」と吉岡に参考資料を渡す。

杉原は吉岡に連絡を取り、人目を避けて会う。杉原は「神崎が大学新設を止めたかったのだろう」と吉岡に同意しつつ、「そんなことで自殺するような人じゃない」と話す。

吉岡もかつて父親が自殺したことを杉原に打ち明け、「真相を知りたい」と伝える。ふたりは信頼関係を築き始める。杉原は「神崎がまだ情報を残しているはずだ」と吉岡に言って解散した。

大学新設に隠された思惑

大学新設問題の報道に政府から圧力がかかっていた。内調は吉岡の身辺情報だけでなく、父親の誤報や自殺についても調査済みだった。

言わば「父親の二の舞になってもいいのか」という政府からの脅しだった。吉岡は「こんな事実関係ない」と言って調査を続けることを宣言する。

吉岡は神崎の自宅を訪ね、神崎の妻にFAXの資料に入っていた “サングラスをかけた羊の絵”を見せる。妻はそれを見て、一冊のお絵かき帳を見せる。その中の神崎が描いたという羊の絵は、資料の羊の絵とそっくりだった。

吉岡が「神崎が資料を託した気持ちに応えたい」と訴えると、神崎の妻は吉岡を書斎に案内し、鍵を渡した。

 

吉岡は鍵のかかった机の引き出しの中から、FAXで送られてきたものと同じ資料を見つける。その下には「DUGWAY SHEEP INCIDENTS」という洋書があった。

それはアメリカのダグウェイで羊が大量死した事件についての本だった。近隣の生物兵器の実験施設との関連が指摘されていた。神崎が印をつけた箇所を見て、彼がたどり着いた事実に気づく。

内閣府が日本に生物兵器の設備を持った大学を作ろうとしている―。

しかし、この証拠だけでは不十分だった。吉岡と杉原は協力して、軍事目的だと明確にわかる資料を手に入れることを計画する。

掴んだ証拠

杉原は入院していた奈津美のもとを訪れる。そこで初めて娘を抱いて、色々な感情がこみ上げた杉原は「ごめん」と言って泣く。

杉原は朝早く、都筑のオフィスを訪れる。杉原は約束があると言って部屋に入り、大学新設に関する資料を探す。

一方、吉岡は出勤途中の続きを捕まえ、取材と称して、時間稼ぎをする。杉原は都筑の机の中から、大学新設の最新の資料を見つけ出し、スマホで1枚1枚撮影をしていく。

 

吉岡が振り切った都筑が部屋に入ったとき、そこには誰もいなかった。

吉岡は陣野を連れて、杉原が待つホテルの部屋に向かう。杉原は、手に入れた大学新設の資料に「軍事目的」が含まれていることを説明する。

吉岡は記事を出してもいいか尋ねる。しかしその時、陣野のもとに「記事を出せば誤報になる」と脅す電話が入ってくる。電話の主は分からずとも、明らかに内調からの圧力だった。

「誤報と言われたら跳ね返せる手段がない」という陣野に対し、杉原は「そのときは僕の実名を出してください」と申し出る。吉岡は「杉原の決意を無駄にはしない」と言って感謝する。

一面を飾る記事

吉岡はそれから記事の文面を書き始める。杉原、陣野と連携を取りながら記事の内容をより良いものにしていく。

そして翌朝、吉岡の書いた記事が朝刊の一面を飾る。ついに世間に記事を出せて、吉岡は達成感をおぼえる。

 

一方、杉原は退院した妻と娘と一緒にマンションに帰っていた。しばらくの間、覗いていなかった郵便受けの中に神崎からの手紙を見つける。それは神崎の遺書で、こう綴られていた。

「新設の大学の運営企業は首相の旧友だった。国民の税金をそこに大量に流してしまうことを知りながら、決算印を押したのは自分だ」

神崎はこれ以上罪をかぶることに耐えられず、自殺したのだった。杉原がショックで呆然としている時、多田から電話がかかってくる。

ふたりの運命

同じ頃、吉岡も陣野から悪い知らせと良い知らせを聞く。悪い方は、政府が雑誌を使って自殺した上司のために官僚が暴走したことにして記事を誤報にしようとしていること。良い方は、大手新聞が東都新聞のスクープのあとを追い始めていることだった。

吉岡は「続報として杉原さんの名前を出す」と言って、杉原のもとへ向かう。

その途中、吉岡に見知らぬ人物から電話がかかってくる。「記事がよく書けている。お父様そっくりだ。お父さんの記事は誤報じゃなかった。でも死んでしまった」

電話の主は多田だった。吉岡は誰かわからなかったが「わざわざありがとうございました」と気丈に言って電話を切った。

 

受話器を置いた多田の部屋には杉原がいた。多田は記事を見ながら「これ、お前じゃないよな」と杉原に問いかける。

黙ったままの杉原に多田はささやく。「外務省に戻りたいか?世間が忘れるまで、しばらく外国に駐在しろ。その代わり、今持っている情報は全て忘れろ」

それでも黙って出ていこうとする杉原の背中に多田は続けた。「撤回することは悪いことじゃないぞ。この国の民主主義は形だけでいいんだ」

吉岡は杉原に電話をかけながら、歩き続けた。一方、杉原の頭には多田に言われた言葉が渦巻き、杉原は苦悩し、頭を抱える。

 

横断歩道の向こう側に杉原を見つけた吉岡は大きく手を挙げた。杉原は吉岡に気づいたが、顔がひどくやつれていた。信号が赤になって、道路を挟んで対峙するふたり。杉原の唇が力なく動き、何かをつぶやくと、吉岡は目を大きく見開いた。

『新聞記者』の感想

今作では、現在進行形で起きている日本のニュースにとても近い話題を取り扱っています。報道の裏側で、実際にこのような情報操作が行わていると思うと恐ろしいですね。

メディアやSNSの情報によって、人の命が奪われてしまうこともあります。政治の裏側と闇、マスメディアが“権力の監視” を本当にできているのかなど、色々考えさせられる内容でした。

ストーリーの面では、特に田中哲司演じる多田の静かな圧力が怖かったです。「国民に尽くす」信念と内閣の同調圧力の間で苦悩する杉原の心理描写も繊細に描かれていました。

視聴者に解釈が委ねられた、結末がわからないラストシーンも印象的でした。最後に杉原は吉岡に何と言ったのか、その後どうなったのか、とても気になります。