映画『猫の恩返し』のあらすじと感想|ネタバレあり

アニメ

アニメ―ション映画『耳をすませば』のスピンオフ作品として公開された『猫の恩返し』。

あらすじと感想、作品情報などをご紹介していきます。

『猫の恩返し』のあらすじ

映画『猫の恩返し』のあらすじを結末まで解説しています。 この先、ネタバレを含んでいるため、ご注意ください。 (※ネタバレの箇所は赤文字で表記しています。)

ハル、猫を助ける

どこにでもいる普通の高校生・ハルは、クラスメイトのひろみと下校途中にトラックに轢かれそうになっていた猫を助けます。するとその猫は二本足で立ち上がり、お礼を言って足早に去って行ってしまいました。

恩返しの始まり

その日の夜、猫の国の一行がお礼をしにハルの家を訪れます。昼間助けた猫は、猫の国の王の息子・ルーン王子だったのです。彼らは「明日より あなた様にたくさんの幸福が訪れるでございましょう」と意味深な言葉を言い残して帰ってしまいました。

翌日、ハルには恩返しとしてねこじゃらしやまたたび、ネズミが贈られます。しかし、ハルは執拗な恩返しに疲れてしまいました。困り果てたハルの前に現れたのは、猫の国の第二秘書のナトルです。ナトルは、「ハルを猫の国に招待したい」と言い、「今夜迎えに行く」と強引に約束を取り付けてしまいます。

猫の事務所での出会い

途方に暮れるハルは、どこからか聞こえる声に導かれ、街で見かけた猫のムタに案内されて「猫の事務所」に辿り着きます。そこで、ハルの悩みを解決してくれるという猫の男爵・バロンとその相棒でカラスのトトに出会います。

ハル、猫の国に連れ去られる

「猫の事務所」で解決策を練ろうとしていた矢先、ハルはナトル率いる猫の群衆に連れ去られてしまいます。ナトルがハルを強引に猫の国に行かせようとするのには、「ハルをルーン王子の妃にしよう」という猫の国の王・猫王のもくろみがあったからでした。

バロン・トト・ムタはハルを追います。トトはムタをハルのところに連れて行き、バロンとトトは空から追跡を続けます。しかし、猫の国に入る直前でハルとバロンは離れ離れになり、ムタとともに猫の国に連れて行かれてしまいました。

ハルの猫化

猫の国は、猫が人間のように生活する場所でした。興味津々のハルはムタの忠告をよそに、猫の国を楽しみます。そしてハルとムタはナトルとともに猫王の住むお城に向かいます。そこは、ハルとルーン王子の結婚を祝福するお祝いムードに包まれていました。

ハルはルーンとの結婚を「私は人間だから」と否定しますが、「その心配はいらない」と第一秘書のナトリは意味ありげに言い放ちます。鏡を見たハルは驚きました。なんと、ハルは猫になっていたのです。

バロンによる救出

ハルは猫になったショックで落ち込んでしまいました。ムタがまたたびゼリーの中で眠ってしまったことが、さらに追い打ちを掛けます。歓迎会の最中も泣いてばかりいたので、猫王は会を盛り上げる芸人の中から、ハルを喜ばせる人を募りました。

すると一匹の猫が名乗り出て、ハルにダンスを勧めます。その猫は、ダンスをしながら彼女に「自分の時間を忘れてはいけない」と伝えます。猫とハルの会話に気づいた猫王は、彼の正体を問い詰めます。実はその猫は、ハルを助けに来たバロンだったのです。

猫の国からの脱出

怒った猫王は、兵隊を呼んでバロンを捕えようとします。そこに眠っていたムタも参加し、会場は大混乱に見舞われました。その乱闘をくぐり抜け、給仕の白猫・ユキの手引きで宴会場を後にしたハル・バロン・ムタは、猫の国からの脱出を試みます。

猫の国に高くそびえたつ塔の一番上は人間界と繋がってるため、彼らはそこを目指すことにしました。しかしその手前には、猫王が策略をめぐらせた迷路が待ち構えています。力を合わせて迷路を脱出した3人は塔の上に向かいますが、猫王によって塔は崩されてしまいます。

 

諦めかけたその時、遠征していたルーン王子が帰国し、「ハルではなくユキと結婚する」と猫王に伝えます。執念深い猫王は、今度はハルを自分の妃にすると言い出しました。しかし、バロンとの対決に負けたため、彼はようやくハルを諦めました。

その間にハルは塔の最上部まで上がりました。しかし、崩された塔は人間界の上空と繋がっており、ハルと跡を追ってきたバロンとムタは塔の上から落ちてしまいます。そんな彼らを助けてくれたのは、人間界で仲間を集めながら帰りを待っていたトトでした。

別れ

学校の屋上に降り立ったハルは、バロンに想いを伝えます。バロンはそれに対しては深く触れず、「また困ったことがあったら、猫の事務所への道は開かれる」と言い残して、仲間とともに去っていくのでした。

『猫の恩返し』の感想

「ごく普通」が肝

主人公のハルは「ごく普通」の女子高生です。遅刻ぎりぎりに登校したり、友達に掃除当番を頼まれたり、気になる男の子に美人の彼女がいて傷ついたりと、冒頭部分ではハルが「いかに普通か」ということを強調するエピソードがいくつも盛り込まれています。

私は、それは現実と猫の国をはっきり分けるものとして機能していたのではないかと思いました。もし、ハルが容姿端麗・品行方正・かっこいい彼氏持ちという設定だったら、一気に現実離れしたおとぎの国の世界の話に変わってしまう気がしませんか?

 

『猫の恩返し』では、人間界(現実)と、猫の国(異世界)の行き来があるので、そこには明確な線引きが必要だったのではないかと思います。そのため、極力浮世離れしないようにハルを「ごく普通」という設定にしたのではないでしょうか。

もしくは、監督は見る人に「もしかしたら自分の身にも起こることかも」というリアルさを感じさせたかったのかもしれません。

いずれにせよ、このようにファンタジー色が強い作品には、「ごく普通」というキーワードがリアリティを持たせる鍵になるのだと思いました。

憎めない悪役

『猫の恩返し』に登場する悪役の猫たちは、とても「人間臭く」描かれています。例えば、最大の悪役として描かれる猫王は、見方を変えれば「息子の結婚相手を真剣に考える優しい父親」だとも言えます。

また、始めこそ冷静沈着でとっつきにくい秘書として描かれていたナトリは、後半に近づくにつれて猫王に振り回される描写が多くなります。その様子がコミカルに描かれていて、ナトリのカタブツというイメージは見事に払拭されます。

この「人間味を帯びた悪役だけど悪役らしくない」猫たちは、物語に奥行きを持たせていると感じました。

もしかしたら、恩返しをする=義理堅いという考えから、猫に「義理と人情に満ちた人間らしさ」という性質が与えられたのかもしれません。

ハルちゃんのスペシャルブレンド

私が『猫の恩返し』を見て魅力的だと思ったのは、非日常体験の扱い方です。

アニメーション映画『千と千尋の神隠し』では、湯屋での出来事はなかったことになっています。千尋がトンネルを振り返った時に銭婆にもらったゴムが光り、冒険をした証は残っていることが暗示されていますが、千尋の記憶からは抜け落ちてしまっています。

それに対して『猫の恩返し』では、ハルは冒険後に母親に「ハルちゃんのスペシャルブレンド」を振る舞います。これは猫の事務所で飲んだ「バロンのスペシャルブレンド」をもじったものです。

 

ここから分かるのは、冒険の出来事はハルの記憶にしっかり残っているということです。私は、猫の国の猫たちがとても魅力的なキャラクターとして描かれているので、ハルが彼らとの交流を忘れてしまうのは物語の雰囲気に合わないと感じました。

そのため、冒険が記憶に残っていることがきちんと示されている所が個人的に嬉しかったです。「ハルちゃんのスペシャルブレンド」を淹れるシーンは、その意味で重要だと思います。

『猫の恩返し』の作品情報

created by Rinker
¥100 (2020/06/01 16:47:23時点 Amazon調べ-詳細)
上映日2002年7月20日
上映時間75分
ジャンル映画
監督森田宏幸
キャスト池脇千鶴、山田孝之など
原作柊あおい『バロンー猫の男爵』
主題歌風になる

登場人物紹介

ハル(池脇千鶴)

ごく普通の高校生で、この物語の主人公。ひょんなことから猫の国に連れ去られてしまい、仲間たちと脱出を試みます。

バロン(袴田吉彦)

不思議な問題を解決する相談所「猫の事務所」の主人。シルクハットとステッキを身に付け、持ち前の知識と教養でハルを助けます。

ユキ(前田亜季)

かつてハルに命を救ってもらった猫。「猫の事務所」にハルを導いた張本人で、猫の国ではお城の給仕をしています。

ルーン(山田孝之)

トラックに轢かれそうになったところを、ハルに助けてもらった猫の国の王子様。わがままな猫王とは違い、自立した性格です。

ナトリ(佐戸井けん太)

猫の国の第一秘書。王の側近として、冷静に仕事をこなす実直なタイプです。

ナトル(濱田マリ)

恩返しの内容をハルに伝えに来た、猫の国の第二秘書。能天気でどこか憎めないキャラクターです。

ムタ(渡辺哲)

バロンの仲間。かなりの大食漢で、過去には猫の国の池の魚を食べ尽くしたこともあります。トトとは犬猿の仲です。

トト(斉藤洋介)

バロンの仲間。空を飛べるという特性を生かして、バロンの足となって活躍します。ムタとはいつも言い争いをしています。

猫王(丹波哲郎)

わがままで自己中心的な猫の国の王様。目的のためなら手段を選ばず、大胆な行動をとります。

[出典:https://ja-jp.facebook.com/kinro.ntv/]