朝井リョウの直木賞受賞作として話題になった同名小説が原作の『何者』。
就職活動を通じて自分は「何者」であるかを模索する、大学生5人のリアルな人間模様が描かれています。
今回は、映画『何者』の作品概要・あらすじ・ネタバレ・感想についてご紹介します。
このページの目次
『何者』の作品概要
上映日 | 2016年10月15日 |
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上映時間 | 98分 |
制作国 | 日本 |
監督 | 三浦大輔 |
原作 | 朝井リョウ『何者』 |
脚本 | 三浦大輔 |
音楽 | 中田ヤスタカ |
主題歌 | 中田ヤスタカ「NANIMONO(feat.米津玄師)」 |
出演 | 佐藤健/有村架純/二階堂ふみ/菅田将暉/岡田将生/山田孝之 |
『桐島、部活やめるってよ』など数々の話題作を生み出してきた人気作家・朝井リョウの直木賞受賞作を映画化。
就職活動に取り組みながら自分の存在価値を模索する大学生たちのリアルな姿を、実力派ぞろいの若手俳優たちが演じる。
友情や青春だけでは終わらない、人間の弱さや自意識を追求したストーリー展開となっている。
『何者』のあらすじ
就活対策本部と称してアパートの一室に集まった5人の大学生は、ときどき集まって情報交換をしながら就職活動に向き合っていくことを決める。
しかし、就職活動の進展とともに、言葉の裏にある真の人間性やSNSに吐き出された本音が見え隠れしだし、仲間でありライバルでもあった彼らの関係はだんだんと歪み始める。
人間として一番価値があるのは誰なのか、そして自分はいったい「何者」なのか。自分の弱さを突きつけられ、本音でぶつかり合ったとき、彼らはあらためて自分を見つめなおすこととなる。
登場人物紹介
二宮拓人(佐藤健)

本作の主人公で、冷静分析系男子。
演劇サークルの活動に明け暮れる日々を過ごしていたが、就職活動を機に演劇をやめる。
神谷光太郎(菅田将暉)

拓人と同じ部屋に住む、元バンドマンの天真爛漫(てんしんらんまん)系男子。
一見何も考えてなさそうだが、持ち前の人当たりの良さで着実に就職活動を進めていく。
田名部瑞月(有村架純)

拓人と光太郎の共通の友人である、地道素直系女子。光太郎とは過去に付き合っていた。
留学の経験があり、理香とは友人関係にある。自分に自信なさげ。
小早川理香(二階堂ふみ)

拓人たちの部屋の上の階に住む、意識高い系女子。留学生交流会で瑞月と知り合う。
行動的で、就職活動の準備にも余念がない。
宮本隆良(岡田将生)

理香と同棲している、空想クリエイター系男子。
就職活動のあり方に疑問を抱き、「自分は周りと同じような就職活動はしない」と言い張っている。
サワ先輩(山田孝之)

拓人の演劇サークルの先輩で大学院生の、達観先輩系男子。
5人のことを冷静かつ客観的に観察している。
[出典:https://www.toho.co.jp/movie/lineup/nanimono-movie.html]
『何者』のネタバレ
就活対策本部 開設
二宮拓人(にのみやたくと)は、大学の友人であり同居人でもある神谷光太郎(かみやこうたろう)のバンドサークル引退ライブを見に来ていた。
そこには、長期留学から帰ってきたという、田名部瑞月(たなべみづき)の姿があった。瑞月は拓人の友人であり、光太郎の元カノでもある。
就職活動を控えスーツに身をつつんだ2人は久しぶりの再会を果たす。しかし、拓人は戸惑い、瑞月とまともに顔を合わせることができずに携帯をいじるそぶりを見せる。
拓人が帰宅すると、引退ライブを終えた光太郎が金髪から黒髪にした姿で風呂場から現れる。彼もまた、本腰を入れて就活を始めようとしていた。
ある日、拓人たちの部屋に瑞月がやってくる。たまたま同じアパートの上の階に住んでいた友人・小早川理香(こばやかわりか)の部屋で就活の対策を練っているのだと言う。
瑞月に連れられて理香の部屋を訪れた拓人と光太郎。4人は就活という共通の目標に向けて意気投合し、定期的にこの部屋に集まって情報交換をしようと約束する。
こうして「就活対策本部」となった理香の部屋には、もう一人、理香の同棲中の彼氏である宮本隆良(みやもとたかよし)も住んでいた。
4人の会話に参加してくるものの、彼の「就活はせず自分の力で生きていくつもりだ」という発言やTwitterの文面から、自分を過信し周囲をバカにしているような印象を受け、拓人は隆良に対して「寒さ」を感じるのであった。
就職活動スタート
出版社を目指す光太郎のWebテストを手伝っていた拓人は、理香がWebテストになかなか受からず苦戦していることを知る。
理香は留学経験もあり英語は堪能だが、計算問題などにはめっぽう弱い。しかし「意識高い系」の彼女はプライドも高く、友だちに頼ることができないのだ。
ある日、広告会社の筆記試験を受けに来た拓人は会場で瑞月と鉢合わせする。
立ち話をする2人の視界に入ってきたのは、普通の就活はしないと言っていたはずの隆良の姿であった。隆良も試験を受けに来ていたのだ。
試験を終えた拓人と瑞月が昼食をとっていると、スーツを着た理香が慌てた様子で店の前を走っていった。理香もまた、同じ広告会社の試験を受けに来ていたのであった。
帰りの電車で瑞月は拓人に、父の不倫が原因で心を病んだ母の面倒を見るため、絶対に内定を取って安定した仕事につかなければならないという、自分の置かれた苦しい状況を打ち明ける。
後日、理香の部屋に拓人と光太郎が集まった。
いつものようにプリンターを借りようとした光太郎を理香はあわてて引きとめる。模擬エントリーシートの準備やOB訪問など、選考本番に向けた準備に余念がなかった彼女だが、パソコンには一次選考不合格の通知が溜まっていたのだ。
電話に出るため部屋を出ていった光太郎の様子と、部屋に残された成績証明書のコピーから、拓人と理香は光太郎が最終選考まで順調に進んでいることを知る。
ギンジの存在
拓人には、かつて演劇サークルでともに脚本を書いて活動していたギンジという相棒がいた。就活を機に演劇をやめた拓人とは対照的に、彼には演劇の世界で生きていくという強い意思があった。
拓人はTwitterを使ってギンジの近況を度々チェックしていた。熱意を持って演劇に向き合い、劇団を立ち上げるという彼を、冷めた目で俯瞰(ふかん)することによって自分を肯定した気になっているのであった。
あるとき、拓人は大学の喫煙所で隆良と出くわし、「就職活動をしているのではないか」と問いつめる。そこで隆良がギンジと手を組んで仕事をしようとしていることを聞かされる。
2人が話をしていると、そこにサワ先輩が現れ、隆良と顔を合わせる。図書館に案内してほしいとサワ先輩に頼まれた拓人は歩きながら、ギンジと隆良には似た「寒さ」を感じるのだと話す。
しかし、実際の隆良を見たサワ先輩は「全然違うよ2人は。お前こそもっと想像力ある奴だと思ってたよ」と返すのであった。
1人目の内定者・瑞月
その日は拓人らの部屋に理香が来ていた。
最終選考に落ちた憂さ晴らしに酒を飲む光太郎の隣で、拓人は何食わぬ顔をしながら、選考に通過していれば来るはずの連絡を待ち構えていたが、電話が鳴ることはなかった。
理香が席を外したタイミングで、拓人のもとに瑞月から電話がかかってくる。この日が最終面接の結果発表日であった瑞月は、緊張してしまうと思って集まりに参加しなかったのだ。
電話口で瑞月は内定をもらったことを拓人に告げる。それを聞いた拓人はそのまま光太郎へ電話を渡すのであった。
数日後、理香の部屋に5人が集まり、瑞月の内定を祝うパーティーが開かれた。そこで瑞月は大手企業のエリア職に内定したことを一同に明かす。
パーティーの途中、瑞月は就活には真剣に向き合おうとしないくせに大きな口ばかりたたく隆良の態度にしびれを切らし、きつい口調で反論して部屋を出て行ってしまう。
そんな瑞月を追って部屋を出た拓人だったが、瑞月がもう一度光太郎に告白してフラれたということ、そして光太郎が頑なに出版社を目指しているのはずっと想い続けている人に会うためであるということを聞かされる。
2人目の内定者・光太郎
瑞月に続いて、次に内定が出たのは光太郎であった。拓人と光太郎は2人で拓人のアルバイト先の店を訪れ、光太郎の出版社内定の祝賀会をした。
途中、サワ先輩やほかの店員が輪に加わる中で、拓人とサワ先輩は喫煙所で話をする。そこでギンジと隆良のことを口にする拓人に対して、サワ先輩は「拓人とギンジが似た者同士だ」と言うのであった。
店からの帰りのタクシーの中で、光太郎は拓人に「俺さ、なんで拓人に内定が出ないのか本当分かんねえんだよ」という言葉をかける。これは皮肉ではなく、拓人のことを心から信頼している光太郎だからこそ、純粋に疑問として口から出た言葉であった。
裏の顔
光太郎の祝賀会から帰宅した拓人は、プリンターを借りに理香の部屋へと向かった。隆良は理香がなくした携帯電話を探しに行っており、部屋には理香しかいなかった。
拓人は理香のパソコンを借り、そのあいだに理香は自分の携帯電話を探すために拓人の携帯電話を貸してもらう。しかし、そこにはお互いに決して見られてはいけない検索履歴が残っていた。
2人はそれぞれ、仲間である光太郎と瑞月の内定先の企業に関する悪い噂や評判を調べていたのだった。
互いに非難し合う2人であったが、理香はたたみかけるように、前々から拓人のTwitterの裏アカウントを知っていたことを暴露する。
自分の弱さを突き付けられ部屋を出ていこうとする拓人の前に、ちょうど部屋に戻ってきた隆良が姿を見せ、就活2年目なんだからいろいろ教えてくれと告げる。この瞬間、拓人は就活浪人をしているという事実が明らかになるのであった。
弱さの自覚
拓人は2つのTwitterのアカウントを使い分けていた。
表向きに就活に関する分析などをつぶやくアカウントとは別に、「@何者」という裏アカウントには、光太郎のバンド活動や理香の性格、隆良やギンジの思想に対して俯瞰(ふかん)的に分析し冷笑するような言葉ばかりをつづっていたのである。
こうすることでしか「自分」を保つことができない、人間としての拓人の弱さがこのアカウントには詰まっていた。
自分の弱さを丸裸にされて痛々しい姿を自覚せざるを得なくなり、取り乱した拓人が走り出した先には瑞月がいた。
泣いている拓人に向かって瑞月は、「拓人の作る演劇が大好きだった」と優しい言葉をかけるのだった。
物語のラスト、面接に臨んだ拓人は、1分間で自分を表現することを求められる。
自分の弱さを自覚した拓人は、詰まりながらも自分の言葉で本音を伝えるべく話し初めるのであった。
『何者』の感想
思わず「こんな人いるいる!」と言いたくなるほど、大学生たちのキャラクター像や言動が忠実に描写されている点が印象的でした。
表面上は取り繕われた、仲間に対する妬みや、腹の探り合いなど、ある意味とても人間らしい部分があらわになっていく展開があまりにもリアルで、まるで自分の汚い心の内を丸裸にされているような気分になりました。
また、就職活動の目的はただ内定を得るというゴールに向かうだけではないと感じました。自分と向き合い、自分を知り、社会の中での存在価値を見出すというプロセスに深い意義があると感じました。
就職活動の経験がある人にとっては、嫌というくらいに共感できる作品だと思います。自分を見つめなおすきっかけになること間違いなしです。
『何者』の視聴方法
『何者』はDVDの購入やレンタル、U-NEXT、Amazonプライムビデオなどの動画配信サービスで視聴することができます。
2020年5月現在、『何者』を視聴できるサービスは以下の通りです。
サービス名 | 配信状況 | 月額料金 |
---|---|---|
U-NEXT | 見放題 | 1,990円 |
Hulu | 視聴不可 | 1,026円 |
Amazonプライムビデオ | 見放題 | 500円 |
Netflix | 見放題 | 800円 |
FODプレミアム | 有料レンタル | 888円 |
dTV | 有料レンタル | 500円 |
dアニメストア | 視聴不可 | 400円 |
TELASA | 見放題 | 562円 |
Paravi | 有料レンタル | 925円 |
NHKオンデマンド | 視聴不可 | 990円 |
TSUTAYAプレミアム | 有料レンタル | 1,100円 |
Disney+ | 視聴不可 | 770円 |
DAZN | 視聴不可 | 1,750円 |
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