映画『万引き家族』のあらすじ・ネタバレ・感想

邦画

カンヌ国際映画祭において最高峰と言われる、パルムドール賞受賞作の『万引き家族』。

日本の現代社会にはびこるさまざまな問題を、とある家族の生き様に重ねて描いた作品となっています。

今回は、映画『万引き家族』の作品概要・あらすじ・ネタバレ・感想についてご紹介します。

『万引き家族』の作品概要

created by Rinker
ポニーキャニオン
¥3,218 (2020/07/09 16:33:45時点 Amazon調べ-詳細)
上映日2018年6月8日
上映時間120分
制作国日本
監督是枝裕和
脚本是枝裕和
音楽細野晴臣
出演リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/樹木希林

本作は、第71回カンヌ国際映画祭において、日本映画としては21年ぶりのパルムドール賞受賞という快挙を成し遂げたことで注目を集めた。

是枝監督とこれまで何度もタッグを組んできたリリー・フランキーや樹木希林のほか、本作が是枝作品初出演の安藤サクラや松岡茉優、そしてオーディションで選ばれた2人の子役らの演技にも称賛の声が上がっている。

『万引き家族』のあらすじ

とある一軒の平屋で暮らす柴田治(しばたおさむ)は、妻の信代(のぶよ)、息子の祥太(しょうた)、信代の妹の亜紀(あき)、そして母の初枝(はつえ)とともに身を寄せ合ってひっそりと生きていた。

彼らは、表向きには独居老人ということになっている初枝の年金と、万引きで盗んだものを生活の足しにして暮らしていた。

ある日、虐待を受けていた幼女を見つけ、「りん」と名付けて家族に迎え入れることにする。

社会的には底辺レベルの生活ながらいつも笑顔が絶えない柴田家であったが、あるできごとをきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、隠されていた事実が明らかになっていく。

登場人物紹介

柴田治(リリー・フランキー)

本作の主人公。日雇い労働者として建設現場で働く。常習的に万引きをしている。

柴田信代(安藤サクラ)

治の妻。パートとしてクリーニング屋の工場で働く。

柴田亜紀(松岡茉優)

信代の妹。風俗店で「さやか」という源氏名を使って働く。

柴田初枝(樹木希林)

治の母親。夫とは離婚しており、年金で生活している。

柴田祥太(城桧吏)

治の息子。治と手を組んで万引きをしている。学校には通っていない。

ゆり(=りん)(佐々木みゆ)

両親にネグレクトされているところを治たちに保護され、柴田家で暮らすようになる。

[出典:https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/]

『万引き家族』のネタバレ

この先、『万引き家族』のストーリーを結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください

新たな家族の迎え入れ

東京の下町にポツンと取り残された、今にも壊れそうな平屋。

この家は、表向きには柴田治の母親・初枝がひとりで暮らしているということにしているが、実際には治と妻の信代、信代の妹・亜紀、治の息子・祥太を加えた、柴田家の5人が身を寄せ合って生活していた。彼らは仕事の収入に加えて、初枝の年金と、万引きで生計を立てていた。

とある冬の寒い日、治はいつものように息子の祥太とスーパーマーケットで万引きを働いていた。

帰り道、団地の部屋から閉め出された幼い女の子を見つけた治は、放っておくことができず自宅に連れて帰る。

 

女の子は「ゆり」と名乗った。家族とともに夕食をとらせた後、治と信代はゆりを団地まで送り届けに行くが、「産みたくて産んだわけじゃない」などと男女の争う声を部屋の外で聞き、ゆりを連れてもう一度柴田家に引き返す。

ゆりの体にはあざややけど痕も見つかり、虐待を受けていると悟った信代は、ゆりを一緒に住まわせよう」と提案する。亜紀は「誘拐になるのではないか」と言って反対するが、信代は「保護」だと言い張り、ゆり自身も柴田家で暮らすことを選ぶ。

柴田家の日常

いつものように、治は建設現場の仕事に、信代はクリーニング店の工場での仕事に出かける。信代はポケットから見つかったものやネクタイピンを度々くすねていた。

初枝は年金を受け取りに、亜紀は勤め先の風俗店で常連客「4番さん」の相手を、そして祥太はゆりを連れて駄菓子屋で万引きをする、といった日常を送っていた。

ある日、治は仕事中に足を骨折し、仕事に行けない事態になってしまう。労災が下りることをあてにするが、結局のところ日雇い労働者の彼に労災は下りず、ますます年金と万引きを頼りに生活せざるを得なくなるのであった。

「ゆり」の名前を「りん」に

2か月経ってもゆりの捜索願が出された様子はなかった。しかし、その後、祥太がテレビで行方不明事件として報道されているのを見つける。ゆりの本名は「北条じゅり」だった。

それでもゆりは本当の親のもとに帰りたがる素ぶりを見せない。そこで一家は周りにばれないよう、ゆりの髪を短く切り、「りん」という名前をつけるのであった。

こうしてじゅり(=ゆり)は「りん」として柴田家の6人目の家族になった。

信代が初枝に言った「こうやって自分で選んだ方が絆が強いんじゃない?」という言葉どおり、りんと柴田家の絆は深まっていくのであった。

仕事を失う信代、亜紀の実家を訪ねる初枝

仕事を休んでいた治であったが、骨折が治ったあとも働きに出ることはなく、相変わらず祥太やりんを連れて万引きをしていた。

信代が働くクリーニング店は、リストラのため信代とその同僚の2人のどちらかが仕事を辞めるよう迫る。りんを家にかくまっていることを知った同僚に、「仕事を譲らなければりんのことをばらす」と脅され、信代は仕事を辞めざるを得なくなった。

こうして、柴田家はまたしても収入源をひとつ失ったのであった。

 

一方、初枝は毎月こっそりと亜紀の実家を訪ねていた

実は亜紀の実家というのは、初枝の別れた夫(=亜紀の祖父)が後妻(=亜紀の祖母)との間にもうけた息子夫婦(=亜紀の両親)の家で、慰謝料として初枝に毎回お金を渡していたのだった。

家族との折り合いが悪く柴田家で生活している亜紀だが、亜紀の両親は表向きには亜紀を長期留学に行かせていることにしており、亜紀の妹である次女はたっぷりと愛情をかけて育ててもらっている。

そんな亜紀のコンプレックスの対象である妹の名前は、亜紀が風俗店で源氏名として使う「さやか」なのであった。

家族団らんの海水浴

夏になり、柴田家は家族そろって電車で海に出かける。

りんが着ている水着は初枝らが万引きで手に入れたものであったが、りんは嬉しそうにはしゃぐ。楽しそうに波に流されて遊ぶ治と祥太の姿は、仲の良い親子そのものだ。

相変わらず裕福とは程遠い暮らしぶりの柴田家であったが、家族はみんな笑顔にあふれ、貧しいながらも幸せに包まれていた。

そんな様子を、初枝はひとり砂浜に座って、ぼそぼそと何やらつぶやきながら眺めるのであった。

初枝の死去

ほどなくして、初枝は自宅で眠ったまま息を引き取る。しかし、残された家族は葬式をするお金もなく、初枝が亡くなったことがばれると年金を受け取ることができなくなる。そのため、初枝の遺体を自宅の床下に埋めることにする。

後日、信代は初枝の年金を不正に引き出しに行くのであった。家の中からは初枝が貯めこんでいたへそくりが見つかり、治と信代は声を上げて喜ぶ。

しかし、そんな大人たちを横目に浮かない表情の祥太。祥太はこの頃から、自分たちがしていることのおかしさを感じ始め、積極的に彼らを手伝わなくなっていった。

事件勃発で家族はバラバラに

ある日、祥太はりんを連れていつものスーパーマーケットに来ていた。りんに見張りをさせ自分が万引きをするつもりが、りんも万引きをしようとしてしまう。

りんの万引きが店員にばれそうなことに気づいた祥太は、自らがおとりになるべく、わざと商品を床に散らかしミカンを持ったまま逃走する。ところが、追いかけてきた店員らに挟みうちにされ、逃げ場をなくした祥太は崖から飛び降り、病院送りになってしまう。

このままではすべてが警察にばれてしまうという窮地に立たされた家族は、祥太を見捨てて逃げることを選択する。しかし、荷物をまとめて家を出ようとしたところを警察に見つかり捕まってしまう。

ここから家族はバラバラになり、りんは実親のもとに返され、残りの3人はそれぞれ事情聴取を受けることになる。

家族が抱えていた秘密

事情聴取が進められるなかで、柴田家の家族が抱えていたそれぞれの秘密が明らかになっていく。

実は治、信代、祥太は全員偽名で、治らと祥太は血のつながりのない他人であった。また、治と信代は過去に殺人を犯しており、治には前科があった。初枝は、このような事情を抱えた彼らを家族のように迎え入れていただけで、治とも実の親子ではなかったのである。

つまり、「万引き家族」にはまったく血縁関係はなく、ただただ心のつながりによって家族のように一緒に暮らしていただけだったのだ。

 

前科がある治をかばって、信代はすべて自分ひとりでやったことだと供述し、懲役5年の刑に服すこととなる。祥太には、家族が祥太を置いて逃げようとしていたことも伝えられる。

その後バラバラになった家族であるが、治はひとり暮らしを始め、祥太は施設から小学校に通うことになる。亜紀はこれまで自分たちが暮らした家を訪れるが、もはやそこに家族の温かみはなく、もぬけの殻となっているのであった。

しばらくして、治は祥太を連れ、信代との面会に訪れる。そこで信代は祥太に、松戸のパチンコ屋の駐車場で車中に放置されていた祥太を治が連れ帰ったことを明かす。

その気になれば両親を探せるよう、車の情報も教えるのであった。

 

その夜、祥太は治の家に泊まることにした。2人は一緒にご飯を食べ、雪だるまを作り、本当の親子のような時間を過ごした。

治と同じ布団に入った祥太は、治たちが自分を置いて逃げようとしていたのは本当なのか尋ねる。治は正直に認め、「おじさんに戻るよ」と返すのだった。

翌日、祥太は施設に帰るため向かったバス停で治に、わざとばれるように万引きしたことを明かす。そのままバスに乗り込んだ祥太は、走って追いかける治の姿を車中から見つめ、何かをつぶやくのであった。

実親のもとに返されたじゅり(=りん)は、またしてもネグレクトを受け、治たちに拾われたときと同じく、閉め出された部屋の外でひとり遠くを見つめて何かをつぶやいているのであった。

『万引き家族』の感想

それぞれの登場人物が抱えていた秘密が徐々に明らかになっていき衝撃を受けると同時に、ただ「つらい」という言葉で表すには難しい、これまで味わったことのないような感情を抱かされました。

誰ひとりとして潔白で正しい生き方をしてきていないけれども、なぜか誰も悪くないと思えて責める気になどなれないのです。そんな感情とは対照的に、淡々とした口調で詰め寄ってくる警察官の姿に憎しみさえ覚えました。

 

「犯罪でしかつながれなかった家族」が主役の本作品を見て、家族とは何なのかということを考えさせられました。

柴田家の人たちは血のつながりはありませんでしたが、そこらの家族以上に家族らしく深い絆でつながっていて、法律や正義だけでははかることのできない心のつながりのようなものを感じました。

ある意味、これこそが本当の家族と言っても良いのではないでしょうか。