映画『風立ちぬ』のあらすじと感想|ネタバレあり

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伝説の戦闘機・ゼロ戦を設計した堀越二郎の半生と、主人公と結核をわずらう妻の療養生活を描いた堀辰雄の小説『風立ちぬ』を組み合わせた映画『風立ちぬ』。

あらすじと感想、作品情報などをご紹介していきます。

『風立ちぬ』のあらすじ

映画『風立ちぬ』のあらすじ(ストーリー)を結末まで解説しています。 この先、ネタバレを含んでいるため、ご注意ください。 (※ネタバレの箇所は赤文字で表記しています。)

カプローニとの出会い

堀越二郎は裕福な家庭に生まれました。勤勉で、正義感が強く、飛行機が好きな少年です。二郎は、いつか飛行機の設計者になりたいと思っていました。そんな時、夢の中でイタリア人の飛行機技術者・ジャンニ=カプローニと出会います。

「目が悪くても設計者になれるか」と二郎は問いました。カプローニは「なれる。自分も飛行機を操縦できない。飛行機は美しい夢だ」と答えます。その言葉に勇気づけられ、二郎は順調に設計者になる夢に近づいていきます。 

菜穂子との再会

大正12年。帝国大学工学部航空学科に入学した二郎は、帰省していた実家から列車で東京へ向かう途中で、関東大震災に遭ってしまいます。そこで同じ列車に乗っていた菜穂子と出会います。菜穂子のお付きの女性が、足を骨折していました。二郎は応援を呼んでその女性を助けます。

2年後、菜穂子のお付きの女性が二郎を訪ねて来ました。しかし、二郎は不在だったため2人は入れ違ってしまいます。さらに2年後、二郎は名古屋の三菱内燃機株式会社に就職しました。そしてドイツを始めヨーロッパ諸国を回り、現地の飛行機会社を視察します。

その後、二郎は新型艦上戦闘機の設計主務者に抜擢されました。時間をかけて作成した戦闘機は、不恰好でした。テスト飛行をするも、空中分解してしまいます。

 

それを受けて、二郎は軽井沢で休養をとることにしました。そこで関東大震災の時に列車で出会った少女・菜穂子と再会します。2人は交流を深め、二郎は徐々にやる気を取り戻しました。

二郎は、菜穂子との婚約を菜穂子の父親に認めてもらいましたが、彼女が結核にかかっていることを知らされます。しかし二郎はそれでも婚約をしました。そして、結核が治ったら結婚することを約束して、二郎は名古屋へ戻ります。

ゼロ戦の完成

東京で仕事に追われていた二郎のもとに、菜穂子が血を吐いたという知らせが来ました。菜穂子は東京に向かい、2人は再会します。ところがやっと会えたのも束の間、重要なプレゼンを明日に控えていた二郎は、その日のうちに名古屋に帰ってしまいました。

菜穂子は結核を治す為に、軽井沢から高原の療養所に移ることを決めました。しかし、二郎からの手紙を読んで感極まり、菜穂子は療養所を抜け出して二郎に会いに行きます。結核は治らないと悟ったので、残された時間を二郎と過ごすためでした。

そしてささやかな結婚式を上げ、二郎と菜穂子は一緒に暮らし始めました。二郎は菜穂子に見守られながらゼロ戦の原型となる新型艦上戦闘機を完成させます。テスト飛行は大成功しました。菜穂子はその日に置手紙を残して、そっと療養所へと戻りました。

好きな人には、自分の美しいところだけを見せたかったのです。その後菜穂子は息を引き取りました。

創造的寿命

ゼロ戦の活躍により、日本は荒れ果てました。二郎は夢でカプローニと再会します。菜穂子と結婚し、菜穂子が亡くなり、ゼロ戦を完成させた半生を振り返って、カプローニの「君の10年はどうだったか?」と問いました。

二郎は「力は尽くしたが、終わりはズタズタだった」と答えます。ゼロ戦は国を滅ぼし、ついに一機も戻ってこなかったのです。2人の頭上を、ゼロ戦が飛んで行きます。カプローニはそれを見て「美しい。いい仕事だ」と伝えました。

カプローニは「ここで待っていた人いる」と言いました。遠くに菜穂子が現れ、「生きて」と言ってから消えてしまいます。二郎は声を震わせて、何度も礼を述べます。カプローニは「君は生きねばならん。その前に、寄っていかないか?…いいワインがあるんだ」と言いました。2人は、夢の中の草原を歩き出しました。

『風立ちぬ』の感想

時空を超えた交流

私が本作で好きなシーンは、二郎とカプローニが夢の中で対話をする部分です。特にラストでは、恋人や生涯をかけて作ったゼロ戦、ひいては日本を失って二郎は落胆します。そんな彼に、カプローニは「いい仕事だ」と声を掛けます。そして、「いいワインがあるんだ」と二郎を連れて行きました。

カプローニは二郎の心のよりどころであり、友人でもあるということが分かるシーンです。映画の最初と最後が夢の中なので、ここで比較ができます。子供時代には無かった「ワイン」という単語が盛り込まれているのが、二郎がカプローニに追いついたことを示していると感じました。

生きる時代は違えど、2人は飛行機の愛で繋がっています。そのようなところにロマンが溢れている映画だと思いました。

菜穂子が登場する意味

小説の『風立ちぬ』では、小説家の主人公と結核をわずらう女性の様子が描かれます。ところが、ここで登場するのは「菜穂子」ではなく「節子」という女性です。菜穂子は、同じく堀辰雄の作品『菜穂子』の登場人物なのです。彼女もまた、結核に侵されています。

なぜ、「節子」ではなく「菜穂子」が選ばれたのでしょうか。私は、両者の性格が関係していると思いました。節子は、小説の中であまり言葉を発さず、成り行きに身を任せる性格で自分から何か行動することはありません。そのため、かなり影が薄い人物です。

 

一方で菜穂子は、男性を黙らせるような強さを持っていたり、結核にも関わらず療養所を抜け出して新宿に向かうなど、活発で自分の力で運命を切り拓こうとする人物です。映画化するにあたって、菜穂子の行動力がヒロインにふさわしいということで、菜穂子が選ばれたのではないでしょうか。

このことから、主人公の人物造形は『風立ちぬ』を参考に、菜穂子の人物造形は『菜穂子』を参考にした事が分かります。

『風立ちぬ』の作品情報

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上映日2013年7月20日
上映時間126分
制作国日本
ジャンル映画
キャスト瀧本美織、西島秀俊
監督宮崎駿
主題歌荒井由実「ひこうき雲」

登場人物紹介

堀越二郎(声:庵野秀明)

主人公。子供のころから飛行機に憧れますが、近眼のためパイロットにはなれませんでした。しかし夢の中でカプローニに出会い、設計者を志すようになります。

 菜穂子(声:里見菜穂子)

ヒロイン。芯が強く、明るく純真な性格。東京の代々木上原の資産家の令嬢で、趣味は画を描くことです。

 ジャンニ=カプローニ(声:野村萬斎)

イタリア人の飛行機技術者。二郎と夢の中で対話します。

[出典:http://www.ghibli.jp/kazetachinu/]