映画『怒り』のあらすじ・ネタバレ・感想

邦画

未解決事件の犯人と思しき知り合いが身近にいるとき、人は、どうしたら良いのか。

日本人の誰もが知っている豪華キャストで送る、2016年公開のミステリー映画。

今回は、映画『怒り』の作品概要・あらすじ・ネタバレ・感想をご紹介します。

『怒り』の作品概要

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上映日2016年
上映時間142分
制作国日本
監督李相日
原作『怒り』/吉田修一
脚本李相日
音楽坂本龍一
主題歌坂本龍一 feat. 2CELLOS「M21 – 許し forgiveness」
出演渡辺謙/森山未來/松山ケンイチ/綾野剛/宮崎あおい/広瀬すず

夫婦が殺害された現場には、「怒」という血文字が残されていた。事件から一年が経った今も犯人は見つかっておらず、指名手配犯として犯人の写真が公開されている。その状況下で、東京・千葉・沖縄それぞれの地にいる前歴不詳の人間の、周囲の人間との関わりを描く。

原作・吉田修一と監督・李相日の組み合わせは2010年公開の大ヒット映画『悪人』に続く二作目で、キャストも渡辺謙をはじめとした、数々の大物俳優が起用されている。本作で妻夫木聡は2017年の日本アカデミー賞の優秀助演男優賞を受賞、『怒り』は他7部門でもノミネートされた。

『怒り』のあらすじ

千葉の実家に帰った愛子は、父・洋平と共に働いている無口な男、田代哲也と出会う。東京の一等地に住む優馬は、ゲイ同士が出会うハッテン場で知り合った住所不定の男、大西直人を家に住まわせる。そして沖縄に引っ越した泉は、島で見かけた謎のバックパッカー、田中信吾と仲を深める。

そんな中、テレビでは指名手配犯に関する放送が流れる。一年前、東京・八王子にて夫婦が惨殺され、犯人は一年経った今も整形して逃亡を続けているという。自分の周りにいる怪しげな男が、どこか指名手配犯に似ているように感じられた人々の葛藤を描く。

登場人物紹介

槇洋平(渡辺謙)

愛子の父。愛子に甘く、心配性。千葉の漁協で働いている。

田中信吾(森山未來)

沖縄の離島に突然現れて自活していたバックパッカー。

田代哲也(松山ケンイチ)

無愛想な男。最近千葉に移住してきて、漁協でバイトを始めた。

大西直也(綾野剛)

物静かな男。ゲイ。東京に出てきたが、住む場所がない。

槇愛子(宮崎あおい)

洋平の娘。天真爛漫で、ちょっと変わったところのある女。

『怒り』のネタバレ

この先、『怒り』のストーリーを結末まで解説しています。ネタバレを含んでいるためご注意ください

夫婦の殺害

東京都八王子市にて、夫婦が殺害された。周囲への聞き込みによると、特に悲鳴とかもなかったらしい。犯人、山神一也は、現場で1時間もの間過ごしていたという。

現場には、血で「怒」の文字が書かれていた。

出会い:愛子と田代

槇愛子(宮崎あおい)は、歌舞伎町のデリヘルで働き疲弊していたところを、槇洋平(渡辺謙)に実家に連れ戻される。車で家に向かっている最中に、最近引っ越してきたという男、田代哲也(松山ケンイチ)に出会う。

洋平の働く漁協でバイトをしている田代のことが気になる愛子は、外でお弁当を食べている田代に話しかける。話の流れで哲也の分もお弁当を作ることになり、二人の距離は縮まる。その後も毎日のように父親と田代の分のお弁当を作る愛子は、田代とたびたび出かけるようになる。

そんな愛子のことが気にかかる洋平は、田代を呼び出して話をする。正社員にならないか、という洋平の誘いを断る田代。歌舞伎町は知っているか、と田代に尋ねる洋平に、田代は「愛子の前職のことは知っている」と答え、「俺、愛子ちゃんといるとほっとするんです」と返した。

仲を深める愛子と田代は、ある日、一緒に暮らしたいと話し出す。洋平は悩みながらも、洋平名義で家を借りることを条件に許可する。そこで前職について聞かれた田代は、曖昧な言葉で濁した。

出会い:優馬と直人

藤田優馬(妻夫木聡)は東京の一等地に住み、人生を謳歌している男だが、母親の介護にも時間を割いている。その日も友達と遊んだ後、母親の世話を終えると、優馬はゲイが出会う場所、ハッテン場に出かけた。そのハッテン場で、優馬は大西直人(松山ケンイチ)と出会う。

出会ったときは抵抗にあったものの、ことを終えたあと、優馬が直人を食事に誘うと直人もついてくる。頑なに自分の話をしない直人に呆れつつも、直人に住む場所がないことを聞いた優馬が「自宅に泊まってもいい」と言うと、直人はついてきた。

ある日優馬は、近場の公園で優馬を待とうとしていた直人に遭遇する。直人の体調が悪いことを知り、昼間も自分の家にいていいと話す。「まだ疑っている。なんかあったら突き出す、ゲイだからって泣き寝入りはしない」と話す優馬に、直人は「信じてくれてありがとう」と返す。

 

それから二人の距離はどんどん縮まる。いつも何かの予定で忙しかった優馬は、休みの日は直人と一緒に過ごすようになった。そんな優馬の姿に、直人は優馬の母親の病態について質問する。ホスピスに連れていって欲しいと頼む直人を一度は拒否するも、最終的には母親の元に直人を連れていく。

直人は優馬の母親のもとに足繁く通い、面倒を見た。仲良くなった直人と母親の姿を見て、優馬も嬉しそうに笑う。優馬の母親は直人の頰にほくろが三つ並んでいるのを褒めるが、直人は「これ、あまり好きじゃなくて」と手で隠す。

優馬の母親が死んだ時に看取ったのも直人だった。駆けつけた優馬は直人の前で弱音を吐くも、意を決して自分の母親に会いにいく。

後日、優馬の母親のお墓について話をした際、優馬は直人に「一緒にお墓に入るか」と誘う。それでもいいよ、と返す直人。冗談だよ、とお互いに濁しながらも、二人は背中越しに幸せそうな笑みを浮かべていた。

出会い:田中、泉、辰哉

小宮山泉(広瀬すず)は親の事情で沖縄に引っ越してきたばかりだ。ある日、同級生の知念辰哉(佐久本宝)に船を出してもらい、近場の離島を散策する。そこで謎のバックパッカー、田中信吾(森山未來)に出会い、「俺がここにいるってこと、誰にも言わないでもらってもいいかな」と言われる。

田中に好感を持った泉は、その後も度々船を出してもらい、田中に会いにいく。田中が逆立ちしていたところに話しかけると、田中は驚いてバランスを崩す。

泉と辰哉が那覇に出かけた日も、偶然出会った田中と、三人で居酒屋で夜ご飯を食べた。辰哉はその日、父親が米軍基地に関するデモに参加していたことについて、「あんなことして変えられんのかな」と話していた。

酔っ払ってふらふら歩く辰哉を追いかけるうちに、泉は人影の少ないところに踏み入ってしまう。米軍の兵士と思しき屈強な外国人二人に公園まで連れて行かれ、レイプされてしまう泉。泉が解放されるまで、辰哉は水道の影でその様子を見ているも、助けに行くことができなかった。

 

「誰にも言わないで」と話す泉に、辰哉はどうすることもできない。訴えるよう勧めるも、「何も変わらない」「『あんなことして変えられんのかな』って辰哉くんも言ってたよね」と泉は泣く。どうしていいかわからなかった辰哉は、田中に会いに行く。

辰哉の働く宿で一緒に働き始めた田中は、なんでもできると評判だった。ある日、泉のことを、泉のことだと言わずに田中に相談する辰哉。辰哉の話を聞いた田中は、「お前の味方だったら、いつだってなるからな」と語る。

その後、田中は宿泊客の荷物を投げているところを辰哉に見つかる。怒られた田中は、「自分にはどうにもできないことにもやもやして荷物に当たった」と話し始める。実は泉がレイプされているところを見ていた、自分には何もできなかったと語り、それを聞いた辰哉は泣き出した。

疑いの発生

だが、指名手配犯の整形後の特徴がテレビで放送されたのを機に、三人の謎の男はそれぞれ、周囲から疑われるようになる。

洋平は田代のことをもともと疑っていた。彼が前に働いていたというペンションに彼の話を聞きに行き、そのペンションで田代が偽名を使って働いていたことがわかってしまう。

愛子にその話をすると、絶対に他の人に話さないことを条件に、愛子が田代の事情を話してくれた。田代の親が借金を残したまま自殺し、返済権をヤクザに売られ、田代は逃げるしかなかったそうだ。「お父ちゃん、どうにかして」と泣く愛子に、洋平はその場に立ちすくむ。

しかし、指名手配犯の特徴が田代に似ていることに悩む洋平。愛子の叔母にそのことを相談すると、叔母は「愛子に話を聞いた、その上で田代は違うと思う」と話す。「愛子はちゃんとしてるよ」と洋平を諌める叔母に、洋平は頷くしかなかった。

 

優馬は、直人がカフェで女性と話していたこと、それを優馬に隠していたことをきっかけに直人を疑うようになる。直人が知り合い数人に起きた空き巣の犯人ではないかと疑いを持つ優馬は、指名手配犯の頰に黒子が三つ並んでいるという報道を見て、直人が指名手配犯だと考える。

警察から直人に関しての電話が来るも、優馬は「知りません」と言い、事情を聞かずに電話を切ってしまう。優馬はためらいながらも、大急ぎで直人の持ち物を捨てた。

田中の顔も、整形後の指名手配犯に少し似ていた。周囲は少し疑うようなそぶりを見せるが、田中の働きぶりから、まさかそんなことはないだろうと仕事に戻っていった。

犯人の知り合い、現る

一方警察では、犯人の山神一也に関して、有力な情報が集まってきていた。

山神の部屋は、文字で埋め尽くされていた。壁に貼られた紙という紙に、人への文句を書き連ねた形跡がある。その筆跡は「怒」という血文字と同じであった。部屋には缶やペットボトル、インスタント麺の残骸が積み上げられ、虫が発生していた。

そして、山神のかつての知り合いだという男も現れた。男は山神が犯罪を犯した理由として、「憐れまれたから」という理由をあげる。「人を下に見ることでなんとか自分を保っている奴が、憐れまれたらどうなるか」と話す男。

男は、山神が一時間居座った理由についても話した。遺体を風呂場に置いた理由を「あいつ、生き返ると思ったんすよ」と言い、そうこうしている間に旦那が帰ってきたから殺したのだ、と語る。証言はあまりにも整合性が取れており、警察はどう扱うか悩む。

犯人、判明

大雨が降ったある日、愛子は実家に戻る。ずぶ濡れの愛子を家に入れようとする洋平に、「警察に電話した」と話す愛子。「田代はいなくなった、犯人じゃないなら戻ってきてと電話したけれど戻ってこなかった、だから警察に通報した」と語る愛子に、洋平は何も言えなくなる。

だが、指紋鑑定の結果、田代は犯人ではなかった。

 

一方、田中は辰哉の宿の設備を片っ端から狂ったように壊していく。そのまま部屋の窓から逃亡した田中に、辰哉は船に乗って会いに行く。そこで見つけた田中は、頰に自分のナイフを押し当ててえぐり取るようにしていて、辰哉は驚いて何も言えなくなる。

いつも田中が過ごしていた洞窟には、「」の文字が刻まれていた。

そして決着へ

田中は辰哉を見つけると話しかける。実は、泉がレイプされているところを、田中は最初の方から見ていた。それからも何度も泉を見にいったと話す田中が「自殺とかされちゃったらウケんじゃん」と言うと、辰哉は絶望に打ちひしがれる。

辰哉の首を絞めて殺そうとする田中は、突然辰哉を解放すると「頭に血が上んないと落ち着かないんだよね」と逆立ちを始める。その様子を見ていた辰哉は、泣きながら田中のお腹を刺して殺した

 

優馬は、直人と待ち合わせていた女性がいたカフェを訪れる。女性はその日も席に座っており、優馬が話しかけると、「直人から聞いてます」と答えた。直人のことを尋ねると、順を追って事情を話してくれる。

自分も直人も施設育ちなこと。心臓が悪くて、薬でだましだまし暮らしていたこと。警察から連絡があった日、直人は優馬の家の近くの公園で倒れていたこと。優馬は堂々としている、自分も強くなれた気になれると話していたこと。優馬は直人のことを疑った自分を恥じ、泣きながら外に飛び出す。

直人は生前、優馬と一緒に見に行った墓に関して「あそこに入れるなら、死ぬのも悪くないよな」と語っていた。一緒の墓に入るかって聞いてくれたのが嬉しかったと言う直人は、少しだけ微笑んで「一緒には入れなかったとしても、隣ならいいよな」と呟いたのだった。

 

呆然と過ごしていた洋平と愛子は、突然の田代からの電話に飛び上がる。今東京駅にいる、電話もするつもりはなかった、でも心配はかけたくなくてと田代は語る。よく戦ったよと田代を諭し、「俺にできることはなんでもするから、頼むから戻ってこい」と話す洋平に、田代は泣き出す。

愛子は東京駅に向かい、田代を迎えに行く。もう大丈夫、と話す愛子に、洋平は「気をつけて帰ってこい」と返す。その頰には、涙が伝っていた。

 

山神一也が辰哉によって殺されたこと、辰哉が「信じていたから許せなかった」と供述していることが報じられた後、泉は自力で田中のいた島に向かう。

洞窟の中の一つの壁に「知り合いの女が犯されていてウケた」という文字が刻まれていたのを、泉は見つける。その文字には、読めなくするかのように、辰哉によって無数の傷がつけられていた

戻ってきた泉は、海岸で、全てをぶつけるかのように叫んだ。

『怒り』の感想

正直な感想を述べると、私は、初見では全然伏線が回収しきれませんでした。見返している最中に「ああ、ここがここの伏線になっていたのか」と気がついて、思わず膝を打つこともしばしばです。それほどに、ミステリー映画として完成されている作品だと感じます。

前述の「あらすじ」には細かいシーン転換などは記載することができませんでしたが、シーンが行き来する際にもさまざまな仕掛けが張り巡らされています。とにかく構成が複雑かつ巧妙で、視聴者をミスリードする要素が大量にあります。オチも最後まで予想がつかず、ハラハラし通しでした。

本作はミステリー映画としての素晴らしさにも富んでいますが、各キャラクターの心情描写、人間関係の展開も美しいです。誰かを信じることのできなかった悔しさ、信じていたからこその悲哀。3つの異なる関係性の魅せ方に、心をわしづかみにされます。

盤石の監督と脚本家に、大物キャストの演技力が余すところなく光る一作です。ぜひご覧ください。

『怒り』の視聴方法

『怒り』はDVDの購入やレンタル、U-NEXTやHuluなどの動画配信サービスで視聴することができます。

2020年6月現在、『怒り』を視聴できるサービスは以下の通りです。

サービス名配信状況月額料金
U-NEXT見放題1,990円
Hulu見放題1,026円
Amazonプライムビデオ見放題500円
Netflix見放題800円
FODプレミアム有料レンタル888円
dTV有料レンタル500円
dアニメストア視聴不可400円
TELASA有料レンタル562円
Paravi有料レンタル925円
NHKオンデマンド視聴不可990円
TSUTAYAプレミアム有料レンタル1,100円
Disney+視聴不可770円
DAZN視聴不可1,750円
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