興行収入196億円と、ジブリ史上第2位の記録を樹立した『ハウルの動く城』。
あらすじと感想、作品情報などをご紹介していきます。
このページの目次
『ハウルの動く城』のあらすじ
ハウルとの出会い
主人公のソフィーは、父が遺した帽子屋で働く18歳の少女です。妹は社交的で愛らしく、職場ではマドンナ的存在として皆からちやほやされています。ソフィーはそんな華やかな妹とは対照的で、真面目で大人しい性格です。
街には、若くて美しい女性の血を奪うと言われる魔法使いのハウルの噂がありましたが、ソフィーは「自分は美しくないから」と他人事のように思っていました。そんな時、ソフィーは街で軍人に声をかけられます。上手くかわせずに困っていた時、青年が助けてくれます。その青年こそが、ハウルだったのです。
ソフィー、おばあさんになる
ソフィーはハウルとの散歩を楽しんで、夜遅くに店に帰りました。すると、帽子屋には怪しげな女が現れました。彼女は、鍵をかけたはずのドアから入ってきたのです。そして、入るなり「安っぽい店、安っぽい帽子、あなたも十分安っぽい」と言い放ちます。
ソフィーはなにやら不穏なものを感じ取り、彼女に帰ってもらおうとしますが、なかなか帰ってくれません。ソフィーがさらに帰るよう促すと、怒った女はソフィーに魔法をかけ、おばあさんの姿にしています。
ソフィー、家を出る
おばあさんになってしまった以上、家にはいられないと思ったソフィーは、居場所を求めて旅に出ます。通りかかった荷車に乗せてもらい、ソフィーは街から遠く離れた丘に辿り着きました。荷車の主は「この先には魔法使いしかいない」と忠告しますが、ソフィーは構わず進みます。
風が吹き荒れる丘で、ソフィーは動くカカシのカブに出会います。彼は、ソフィーをボロボロの動く城に案内します。この動く城の主は、街で出会った魔法使いのハウルでした。彼女は城の中に入り、火の悪魔のカルシファーと話しているうちに眠ってしまいます。
動く城での生活の始まり
ソフィーは翌朝、上の階から誰かが下りてくる音で目覚めます。降りてきたのは、ハウルの弟子の少年のマルクルです。彼は見事におじいさんに変装し、来客の相手をします。ソフィーはそんなマルクルをよそに、城の中を見て回りました。そして、この城が非常に汚れていることに気づきます。
マルクルが朝ごはんの用意をし始めたのを見たソフィーは「私が作ってあげる」と言い、ハウルの言うことしか聞かないカルシファーにベーコンを焼かせました。その時、ハウルが現れてソフィーに正体をたずねます。
ソフィーはとっさに「この家の掃除婦さ」と言い、ハウルはそれに対して何も言わなかったため、彼女は動く城に住み始めます。マルクルとハウルとともに、これからの生活に向けて動き出しました。
平穏な生活に入る亀裂
ソフィーのおかげで、城はみるみるうちに活気づきました。順調に生活が進んでいくと思われた矢先、事件が起こります。
ソフィーがお風呂の棚を掃除してしまったせいでまじないがめちゃくちゃになり、ハウルの美しいブロンドの髪の毛が真っ黒になってしまったのです。ハウルは「美しくなければ意味がない」と自分をコントロールできなくなるほどの自己嫌悪に陥ります。
弱虫のハウル
ハウルは、自分が荒地の魔女から狙われていると告白します。荒地の魔女は、ソフィーに呪いをかけた魔女です。ハウルは彼女が怖くて仕方がないのだと言いました。
また、国王に仕える元師匠のサリマンから呼び出され、怯えるハウルの代わりにソフィーが宮殿に向かうことになりました。家を出る前に、ハウルはソフィーに身代わりとして指輪を渡します。
サリマンとの戦い
宮殿に向かう途中、ソフィーは荒地の魔女に会います。彼女もサリマンに呼ばれていたのです。荒地の魔女は、「私はここを追い出されてから50年も荒地でこの日が来るのをずっとと待っていた」とサリマンに対し憎しみを露わにします。その後ソフィーと対峙したサリマンは、ハウルの心は悪魔との契約のせいで今後蝕まれていくと話しました。
そこに、サリマンによって魔力を奪い取られて老婆になった荒地の魔女が運ばれてきます。そして、戦争に協力しなければ荒地の魔女のようにハウルの魔力を奪い取ると警告しました。
その時、国王に変装したハウルが現れてソフィーを連れて宮殿から脱出します。ハウルはソフィーを城に帰らせて、自分はサリマンの追っ手を巻くために去って行きました。
戦うハウル
次の日、帰ってきたハウルはソフィーを「秘密の庭」に案内します。2人は束の間の幸せを分かち合いましたが、そこにサリマンの手下がやってきて、ハウルは戦うべくソフィーの元を去って行きました。
ソフィーが家に戻った時、街には戦火が広がっていました。鳥の姿になったハウルは、ソフィーを守るために戦う覚悟をします。
消えるカルシファー
ハウルの帰りを待ちながら、ソフィー達は必死に家を守ります。しかし、カルシファーの言葉で心臓への執着を再燃させた荒地の魔女は、カルシファーに襲いかかります。火は魔女に燃え移り、彼女は熱さに苦しみます。
ソフィーはとっさの判断でカルシファーに水をかけました。カルシファーは消えてしまいました。それはハウルの命が消える事を意味するので、ソフィーは泣き崩れます。
契約の秘密
悲しみにふけるソフィーを救ったのは、ハウルの指輪でした。指輪からは出る光線に導かれてハウルの子供時代にタイムスリップします。そこで「ハウルは自分の心臓と引き換えに、カルシファーの魔力を手に入れた」という契約の秘密を知ったソフィーは、再び元の場所に戻されます。
契約の解消
戻ったソフィーを待ち受けていたのは、ぼろぼろに傷ついた鳥の姿のハウルでした。ソフィーはハウルに皆のところに連れて行ってほしいと頼みます。その頃家族たちはハウルとソフィーの帰りを待っていました。再会できたところで、ハウルは力尽きます。
そこでソフィーがカルシファーの心臓をハウルに返すと、ハウルは息を吹き返します。カルシファーとハウルの契約は解消され、カカシのカブの呪いは解かれました。戦争は収束に向かい、平和な日常が訪れるところで、物語は終わります。
『ハウルの動く城』の感想
美味しい映画
「ジブリ飯」という言葉があるほど、ジブリ映画の食べ物のシーンは食欲をそそることで有名です。『ハウルの動く城』と言ったら、なんといってもベーコンエッグでしょう。
分厚いベーコンがジュージュ―焼かれる音や、にじみ出る脂、半熟の卵には食指を動かされます。それをマルクルが豪快に頬張るシーンも見どころです。
ほかにも、ソフィーが丘でパンとチーズを食べる場面や、マルクルと湖でお茶を飲む場面など、食事のカットが散りばめられています。そういう部分に着目してみるもの面白いですね。
豪華な声優陣
実に多くの有名人が声優を担当しているのが『ハウルの動く城』の特徴です。少女でありながらもおばあさんという難しい設定の中で、両方を演じ分けているのは女優の倍賞千恵子さんです。
また、イケメンキャラとして描かれる魔法使いのハウルの声は、木村拓哉さんが担当しています。その落ち着いた声はハウルのイメージにぴったりです。
そして、美輪明宏さん演じる荒地の魔女の迫力には度肝を抜かれました。さらに驚くべきは、魔力を失う前と後との違いです。声だけでなく、物腰の柔らかさや話し方で全く違う印象を与える技術は実に見事です。
『借りぐらしのアリエッティ』で翔役を演じる神木隆之介さんは、徐々にソフィーに心を許していくマルクルを熱演しています。ソフィーを本当のお母さんのように慕い、「ソフィー、行っちゃやだ!」と抱きつくシーンはいつ観ても心を動かされます。
呪いをかけているのは自分自身
物語の冒頭部分のソフィーは、自分の本心ややりたいことを押さえつけて、下町の帽子屋で黙々と帽子を作る日々を送っていました。美しくて社交的な義母や妹との交流が描かれていて、ソフィーの地味さがより目立つ構成になっています。
兵隊のパレードをよそに足早に路地へ向かうシーンは、彼女の内向的な性格をよく表しているシーンだと思います。ソフィーがこれほど華やかさを避けているのには、「自分は美しくない」という強い思いがあるからです。
しかし、おばあさんになって少し大胆になったソフィーは、徐々に自己を表現するようになります。最終的にはハウルにしっかり愛を伝えられるほど、芯の強い真っ直ぐな女性になりました。
冒頭のソフィーのように、ねじまがった精神で自分にマイナスの暗示をかけている人は実際多いのではないかと思いました。行き過ぎた過大評価は問題ですが、過小評価はもっとたちが悪いと思います。
「どうせ私なんか」という偏屈な態度ではなく、ソフィーのように素直に自分と向き合いたいと思えた映画でした。
『ハウルの動く城』の作品情報
上映日 | 2004年11月20日 |
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上映時間 | 119分 |
制作国 | 日本 |
ジャンル | アニメーション映画 |
監督 | 宮崎駿 |
キャスト | 木村拓哉、美輪明宏、神木隆之介など |
原作 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『魔法使いハウルと火の悪魔』 |
主題歌 | 世界の約束 |
登場人物紹介
ソフィー(倍賞千恵子)

荒地の魔女に呪いをかけられ、90歳のおばあさんの姿に変えられてしまう少女。自分に自信がなく、消極的な性格でしたが、老婆になってからは積極的に行動するようになります。
ハウル(木村拓哉)

動く城を拠点にする魔法使い。荒地の魔女に心臓を取られることを恐れて怯える、臆病で弱虫な性格です。
荒地の魔女(美輪明宏)

ハウルの心臓を狙う魔女。元々宮廷に仕えていましたが、悪魔と契約したため城を追い出されてしまいます。
カルシファー(我修院達也)

火の悪魔。城が動くエネルギー源として活躍していますが、ハウルとの契約によって縛られているため、ソフィーに契約の内容を暴くことを頼みます。
マルクル(神木隆之介)

ハウルの弟子。留守にしがちなハウルに代わって、城の番をしています。
カブ(大泉洋)

呪いによってかかしに変えられてしまった隣国の王子。ソフィーのことを気に入ったため、なにかと手助けをしてくれます。
サリマン(加藤治子)

戦争真っ只中の国の王に仕える魔法使いで、ハウルの師匠。あの手この手でハウルを戦争に協力させようと企てます。
ヒン(原田大二郎)

サリマンの遣い犬。ソフィーたちに懐いたため、サリマンへの報告を怠るようになります。