愛する者を救うため、過去を書き換えようとした男が体験する出来事をスリリングに描く映画『バタフライ・エフェクト』。
今回は、映画『バタフライ・エフェクト』の作品概要・あらすじ・ネタバレ・感想をご紹介します。
このページの目次
『バタフライ・エフェクト』の作品概要
上映日 | 2005年5月14日 |
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上映時間 | 114分 |
制作国 | アメリカ合衆国 |
監督・脚本 | エリック・ブレス/J・マッキー・グルーバー |
音楽 | マイケル・サビ― |
出演 | アシュトン・カッチャー/エイミー・スマート/ウィリアム・リー・スコット/エルデン・ヘンソン/メローラ・ウォルターズ/エリック・ストルツ |
ごく小さな差違が、将来的に予測不能な大きな違いを生じるという “バタフライ・エフェクト”を効果的に取り入れたサスペンス。
愛する者を救うため、過去を書き換えようとした男が体験する想像を絶する出来事をスリリングに描く。
『バタフライ・エフェクト』のあらすじ
エヴァンは幼少期から記憶を喪失する “ブラックアウト” をよく起こしていた。医師の勧めで日記をつけるようになってから数年後、エヴァンはある事件が原因で幼なじみケイリーとの仲が引き裂かれてしまう。
大学生となり、ブラックアウトもなくなり平穏な日々を送っていたエヴァンは、昔の日記を手にとる。
すると、当時の記憶が鮮明に蘇った。やがてケイリーのその後の運命を知ったエヴァンは、彼女への想いのあまり、ある行動に出る。
登場人物紹介
エヴァン(アシュトン・カッチャー)
幼少期から短期間の記憶を失うブラックアウトを起こしている青年。
ケイリー(エイミー・スマート)
エヴァンの幼なじみで初恋の人。
トミー(ウィリアム・リー・スコット)
ケイリーの兄。
レニー(エルデン・ヘンソン)
エヴァンの幼なじみ。
アンドレア(メローラ・ウォルターズ)
エヴァンの母親。
ジョージ(エリック・ストルツ)
ケイリーとトミーの父親。
『バタフライ・エフェクト』のネタバレ
13年前の出来事
ある男が逃げるように部屋に駆け込み、ソファを動かしドアを開けられないようにする。エヴァンというその男は机の下にもぐって紙に書き殴る。
「もし僕が最初に戻れたら、その時はきっと彼女を救えるだろう」
13年前、エヴァンは短期間の記憶を失くす“ブラック・アウト”をよく起こしていた。ある日、エヴァンの母アンドレアは学校の先生に呼び出される。エヴァンは将来の夢を絵に描く授業で、包丁で人を殺す絵を描いていたのだ。そのときもエヴァンは記憶を失くしていた。
エヴァンは精神科医の勧めで日記を書き始める。ある日、エヴァンは幼なじみケイリーとその兄トミーの家に遊びに行く。出かける前、アンドレアはエヴァンが包丁を手に直立していることに驚く。エヴァンは我に帰ると、包丁を手放した。
ケイリーとトミーの父親ジョージがビデオカメラで撮影すると言い出す。次の瞬間、エヴァンが気づくとケイリーと一緒に裸でジョージのカメラの前に立たされていた。エヴァンがケイリーに何があったか尋ねるが何も答えなかった。
エヴァンは精神病院に入院している父親ジェイソンに初めて面会する。しかし次の瞬間、ジェイソンは拘束具をつけたままエヴァンの首を絞めて殺そうとする。止めに入った監視員に殴られ、ジェイソンは亡くなった。
7年前の出来事
それから6年後、エヴァンはケイリーとトミー、友達のレニーとつるんでいた。トミーはジョージが地下室に隠していたダイナマイトを近所の郵便受けに仕掛けるいたずらを考案する。
レニーが爆弾をセットしてから、4人は爆発するまで木に隠れて見ていた。
次の瞬間、エヴァンは森の中でトミーと一緒に気絶したレニーの肩を担いで歩いていた。レニーは救急車で運ばれる。アンドレアは何が起こったか詰問するが、エヴァンは何も覚えていなかった。
エヴァンの医師は爆弾をしかけた時のことを催眠療法で聞き出す。車が近づいてきたところから先を思い出そうとするとエヴァンの体は痙攣し始める。エヴァンは鼻血を出しながら目を覚ました。
エヴァンとケイリーは退院したレニーを訪ねる。3人が廃品置き場に行くと、そこではトミーがエヴァンの愛犬クロケットを袋に閉じ込め、ガソリンをまいていた。
トミーは、エヴァンとケイリーが仲良くしていることを快く思っておらず、その場にあった木材でケイリーとエヴァンを殴る。そして、トミーは袋に火をつけようとする。
次の瞬間、エヴァンが気がつくと、ケイリーが座ったまま泣いており、愛犬が入った袋は黒焦げになっていた。レニーはその場に立ち尽くしていた。
一連の出来事が原因で、アンドレアはエヴァンと引っ越すことを決める。エヴァンはケイリーに「迎えに来る」というメッセージを残した。
日記で取り戻される記憶
7年後、エヴァンは大学で心理学を専攻しており、成績も優秀。引っ越してからは記憶喪失を一度も起こしていなかった。エヴァンはその記念としてルームメイトのサンパーと一緒にバーへ行く。
エヴァンはそこで知り合った女の子を自室に連れて帰る。ベッドの下に隠していた昔の日記を読んでほしいと頼まれ、エヴァンは愛犬が殺された日の日記を読み始める。すると紙面の文字が震えだし、当時の記憶が蘇る。
エヴァンがトミーに殴られた後、レニーは袋を開けようとしたがロープを切ることができなかった。さらにトミーにひどく罵倒され、やめてしまう。トミーが袋に火をつけたところで、エヴァンは自室のベッドで目を覚ました。
エヴァンはレニーの家を訪れる。エヴァンは廃品置き場で起きたことを聞こうとするが、レニーはトミーに罵倒された言葉をつぶやいて、エヴァンに掴みかかった。
エヴァンは日記を読み返し、ブラックアウトしたときの出来事を思い出し始める。郵便受けに爆弾をしかけたときの記憶に戻った。
エヴァンは木に隠れていた時、タバコを落としてお腹に火傷を負う。そして1台の車が近づいてくる。車から出てきた母親と赤ん坊が郵便受けを開けようとした瞬間、爆発が起こった。レニーはその悲惨な光景にショックで気絶したのだった。
エヴァンは自室で目を覚ます。夢かと思ったが、お腹には火傷の跡がしっかり残っており、現実だとわかる。
ケイリーとの再会
エヴァンは母アンドレアから「父親がエヴァンと同じ年の頃、記憶を取り戻す方法を見つけた」と聞く。しかし、母親は「父親は病気だった」と言ってそれ以上は教えてくれなかった。
エヴァンはケイリーの働くレストランを訪れる。エヴァンは仕事終わりのケイリーに声をかけ、7年ぶりに再会を果たす。
軽く近況報告をした後、エヴァンはケイリーにジョージに性的虐待を受けたときの話を聞こうとする。しかし、ケイリーは「わざわざ嫌な事を思い出させに会いに来たのか」と泣きながら帰ってしまった。
次の日、エヴァンが自室に戻ると、トミーから「ケイリーが昨晩自殺した」との留守電が入る。トミーは「エヴァンのせいだ」とひどく怒っていた。エヴァンはこっそりケイリーの棺に花を供える。
書き換えられた過去
エヴァンは「記憶を取り戻せるなら、過去の傷も治すことも可能ではないか」と考える。ジョージが地下室で撮影をした日の日記を読み返すと、当時の記憶に戻る。
ジョージがケイリーとエヴァンに「服を脱げ」と言ったとき、エヴァンはケイリーに耳を塞がせる。エヴァンはジョージを罵りながら「娘にトラウマを与えて自殺させてもいいのか」と言って自分の行為を改めさせる。
エヴァンが目を覚ますと見知らぬ部屋にいた。エヴァンは鼻血を出しながら激しい頭痛に襲われ、幼少期から今までの記憶が書き換わる。そして、ベッドの隣で起き上がったのは死んだはずのケイリーだった。
エヴァンとケイリーは一緒の大学に通い、服装や交流関係も派手になっていた。エヴァンは戸惑いながらも、ケイリーと過ごす時間を楽しむ。
ある夜、エヴァンは大学の社交クラブでケイリーをディナーに招待する。しかし、エヴァンの車が何者かに壊されて中断。車内には亡くなった愛犬の首輪が残されており、トミーの仕業だと気づく。
地下室での一件の後、トミーはケイリーの代わりに父親からさらに暴力を受けるようになったという。トミーはケイリーとエヴァンの仲を裂こうと、ふたりの前に現れる。
バットで殴りかかるトミーにエヴァンは催涙スプレーで対抗する。エヴァンは今まで積み重なった憎悪から、奪いとったバットでトミーを殴り殺してしまった。
タイムトラベル
エヴァンは刑務所に入る。母親に日記を差し入れてもらうが、刑務所内で力の強いふたりの受刑者に奪われてしまう。
エヴァンは相部屋のカルロスの前で破り取った日記の一部を読み返す。エヴァンは小学校で絵を描いた日に戻り、メモホルダーの釘に両手を刺してわざとケガをする。エヴァンが刑務所で目を覚ますと、両手に新しい傷跡が現れ、信心深いカルロスは「神のしるしだ」と崇める。
エヴァンは日記を奪った受刑者の牢屋に現れる。エヴァンはふたりに取り入るふりをして、隠し持っていたナイフで刺す。それはエヴァンが小学生の時に描いた絵とまさに同じだった。
カルロスが牢屋の扉を押さえている間に、エヴァンは日記を読み返して廃品置き場の日に戻る。
エヴァンはレニーに袋のロープを切る用に “尖った廃材” を持たせる。エヴァンは火をつけようとしたトミーを説得し、トミーは袋を開けて犬を逃がす。エヴァンは安堵するが、レニーが尖った廃材でトミーを刺し殺してしまった。
エヴァンが目覚めると、大学のルームメイト・サンパーとベッドの配置が逆になっていた。トミーの死後、ケイリーはグレて家を出て、レニーは精神病院に送られていた。
エヴァンは精神病院のベッドで拘束されていたレニーに「お前がここにいるべきだ」と言われてしまう。
エヴァンは父親と面会した日に戻り、正しくやり直す方法を尋ねる。しかし、父親は「記憶を書き換えるのはやめろ」と言ってエヴァンを絞め殺そうとするだけだった。
繰り返される不幸
エヴァンは、すっかり荒れ果ててしまったケイリーと再会する。エヴァンは過去を変えてケイリーと幸せな日々を送ったことがあると説明するが、かえって今の彼女を傷つけるだけだった。
エヴァンは過去を書き換えると誰かが不幸になるとわかりながらも、再び爆弾を仕掛けた日に戻る。エヴァンは母親と赤ん坊の前に飛び出し、郵便受けに近づかないよう忠告する。郵便受けが爆発した瞬間、エヴァンは目を覚ます。
今度こそうまくいったと思われたが、エヴァンは爆発の後遺症で両手を失っていた。さらに、レニーとケイリーが恋人同士になっていた。暴力的だったトミーは母親と赤ん坊を救った経験から信仰深い好青年に変わっていた。
一方の自分は車椅子で義手生活、両思いだったケイリーとも結ばれない。あまりの大きなギャップにエヴァンは風呂場で自殺を図るが、トミーに止められる。
母アンドレアはエヴァンの事故後ヘビースモーカーになり、肺ガンを患っていた。アンドレアは止めるが、エヴァンは「母親を救ってあげる」と言って病室を去った。
エヴァンは爆弾をあらかじめ壊すことを計画する。エヴァンはケイリーの家に遊びに行く前に、包丁を持って行こうとしたが、母親に見つかりうまくいかなかった。
エヴァンは再び地下室での撮影時に戻り、ダイナマイトとライターを手に持ってジョージを脅す。火がついたダイナマイトが転がり、幼いケイリーが花火だと思ってダイナマイトを手にしたところで爆発した。
最後の決断
エヴァンが目覚めると精神病院のベッドにいた。エヴァンはケイリーの死後、ありもしない経験ばかり話すので病気だと思われ、精神病院に入れられていた。
さらに、エヴァンが書き続けていた日記がなくなっていた。医師から父親もかつてフォトアルバムを必死に探していたことを聞いて、エヴァンはあることを思いつく。
エヴァンは病院の一室に駆け込み、ドアをソファでふさぐ。母親が持ってきたホームビデオを抱えて机の下に隠れ、最期になるかもしれない言葉を紙に書き残す。
「もし僕が最初に戻れたら、その時はきっと彼女を救えるだろう」
警備員がガラスを突き破って入って来ようとする中、エヴァンはホームビデオを見始める。それはエヴァンが初めてケイリーと出会ったときの映像だった。過去に戻ったエヴァンはケイリーに「近づくな」とひどい言葉を浴びせる。
エヴァンが目覚めると大学の寮で、同じ部屋にはレニーがいた。ケイリーとトミーは心優しい母親のもとで愛情いっぱいに育ち、ふたりとも大学へ進学していた。
エヴァンとケイリーは全くの他人になっていたが、周囲の人間で誰も不幸な人生を送っている者はいなかった。
エヴァンは持っていた日記や写真、ビデオテープを全て焼き払い、過去を書き換えることをやめた。
それから8年後、街角でエヴァンはケイリーとすれ違う。エヴァンは一瞬振り返ったが、言葉を交わすことはなかった。
『バタフライ・エフェクト』の感想
わずかな違いが、ある人の人格やその後の人生を大きく変えてしまうという、まさに “バタフライ効果” を表した作品でした。
過去の記憶を書き換えられる能力を持つエヴァンの体験を一緒に味わっている気分になって、とてもスリリングなストーリーに引き込まれました。
トラウマになりそうなショッキングな出来事が多いですが、前半の幼少期の不可解な記憶喪失と後半のエヴァンの行動がつながると「そういうことだったのか!」と意味がわかってスッキリします。
繰り返される不幸の末に、エヴァンが導き出した決断は切ないですが、きれいな終わり方だと思いました。